<グノシーより>
全国初「議会基本条例」を制定した北海道栗山町議会のホームページ
地方議会が、自ら議会運営の基本原則を定める「議会基本条例」。地方分権の進展を見据え、議会や地方議員の果たすべき役割を明確にしようと、2006年5月北海道栗山町が全国に先駆けて制定しました。それから約10年、全国地方議会の議会改革について調査している早稲田大学マニフェスト研究所(http://www.maniken.jp/gikai/)「議会改革度調査2015」(http://www.maniken.jp/gikai/2015_data4.pdf)によると、回答があった1414議会のうち、半数弱にあたる651議会(46%)が同条例を制定した、と答えています(グラフ1)。同条例が登場した背景には何があったのでしょうか。
「議会報告会」制度化模索がきっかけ
栗山町議会基本条例は「請願、陳情を町民からの政策提案として位置づけ」、「重要な議案に対する議員の態度(賛否)を公表」、「年1回の議会報告会の開催を義務化」、「議員の質問に対する町長や町職員の反問権の付与」、「政策形成過程に関する資料の提出義務化」、「議員相互間の自由討議の推進」、「政務調査費に関する透明性の確保」、「議員の政治倫理を明記」など、議会改革の姿勢を鮮明にしています。
今では全国の地方議会が、この“栗山町議会モデル”を参考にしていますが、当時、議会事務局長を務めた東京財団研究員、中尾修さん(68)は、「初めから議会基本条例を作成しようということではなかった」と説明します。
2000年地方分権一括法の施行で国の機関委任事務制度が廃止、また2007年統一地方選挙で議員定数が5人減の13人になることが決まっていたことから、栗山町議会は2001年から「町民に開かれた議会」を目指し、議会改革に取り組んでいました。住民から「議員はいつも視察ばかりに行っている」「議会が何をやっているかわからない」という批判もあったといいます。そのため、議案がどのように決まっているか説明し、住民の議会の仕組みやわからない点に答えるため、2005年全国で2例目となる議会報告会を実施しました。
「議員の皆さんは初め、相当緊張した」と中尾さんは当時を振り返ります。しかし町内12会場で実施した報告会には、住民1万4千人のうち370人が集まり、評判も良いものでした。住民から批判を受けても、それに対して答えるチャンスがある、と議員も議会報告会の必要性を実感しました。思いがけず、参加住民からは「議会報告会を毎年続けてほしい」「制度化するべきだ」という声が上がりました。
地方分権の大波と戦う……議員が議会改革のために団結
[グラフ1]議会基本条例の制定と改正状況=早稲田大学マニフェスト研究所「議会改革度調査2015」より作成
議会報告会実施を条例化できないか ── 。模索中に議会事務局職員が見つけたのが、札幌市職員の渡辺三省さんが「北海道自治研究」に発表した議会基本条例の試案でした。「内容の7、8割はこれまで実践してきたものだったが、議会報告会について書いてないなど、札幌をモデルとした試案だったので自分たちに合うようカスタマイズしていった」。
制定に向け、ハードルとなったのは「法制度」と中尾さんは明かします。地方議会のことは地方自治法の定めによる会議規則。そこで、新しく議会の活動原則を条例化するために、よりどころとしたのが「地方公共団体の権能」を定めた憲法94条「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、 法律の範囲内で条例を制定することができる」の一文でした。
「議会改革を進める当時の橋場利勝議長の政治姿勢に対し、議員みんなが党派を超えて一緒に取り組むことができたのは、戦う相手があったから」。小泉内閣による行財政改革、平成の大合併 ……、これら「大波と向き合おう」という危機感が議会にありました。
同条例制定から間もない2006年6月、夕張市が財政破綻を表明、自治体が自ら経営責任を問われる時代に入ったことを象徴する事例として受け止められました。夕張市に隣接する栗山町の議会基本条例の取り組みは、地方分権時代を切り拓くための必要な改革として、全国から注目を浴びることになりました。
議会基本条例は「改革の推進力」 人口減少時代に真価が問われる
議会基本条例を制定することが、地方議会にどのような効果をもたらすのか。早稲田大学マニフェスト研究所は「議会改革度調査2014」(http://www.maniken.jp/gikai/2014_kihonjorei.pdf)で同条例について調査結果を分析しています(1503議会が回答)。その報告では、2014年度「議会基本条例を制定している」と答えたのは約4割でしたが、議会改革度ランキング上位100議会に絞ると制定率は98%に。議会基本条例は「改革の推進力」と評しています。
中尾さんは議会基本条例後の10年を振り返り、「住民の関心がなければ議会は機能しない」と話します。きっかけとなった議会報告会は毎年3月に続けられ、町の恒例行事として住民に認知されるようになりました。栗山町の議会基本条例は改選1年目に見直しの規定を盛り込んでいて、町の実情に合ったものになるよう改正を続けてきました。ことし3月からは毎年見直し作業をするとして、条例改正しています。
「今まで経験したことがない人口減少時代に入り、これから地方議会が試される」と中尾さんは話します。水道料や固定資産税、保育サービスなど、地域住民サービスは値上げや廃止に直面します。そのときに、地方議会はどう動き、住民参加を促すことができるのか、議会基本条例制定の真価が問われるのはこれからです。
https://gikaikaikakukawaguchi.blogspot.com/2017/06/blog-post_24.html地方議会が自らルールを決める 全国初「議会基本条例」はこうして生まれた