2017年6月11日日曜日

地方は国の“下請け”ではない 改革に目覚めた地方議会の活動把握

<GOOニュースより>


そもそも地方議会は、どのような役割を担っているのでしょう。一見同じようですが、日本の地方議会は、国政とは異なる仕組みをとっています。国政では、直接選挙で選んだ議員で構成される議会が首相を指名し、その首相が内閣を組織する「議院内閣制」になっています。しかし、地方議会は、議員も首長も、どちらも主権者である住民から直接選挙で選ばれる「二元代表制」の考えで成り立っています。

 つまり、地方議会では、ともに住民を代表する長と議会が、対等の立場で、適度の緊張感とバランスを保ちながら、自治体運営の基本的な方向性を決め、仕事ぶりを互いにチェックし合うことが求められています。加えて、2000年には国が地方機関に指示していた「機関委任事務制度」が廃止されるなど、地方分権一括法が成立し、地方は国の下部機関ではなく、国と対等の関係へと変化しました。

議会事務局にパソコンがない

 2010年度から議会改革度調査を実施している早稲田大学マニフェスト研究所(http://www.maniken.jp/gikai/)の中村健事務局長は、同法ができるまでは「この仕事は国から来たからやっていると、言えばよかった」状態から、法施行で国の“下請け”から脱したことにより、「チェック機能としての議会の存在が問われるようになり、その中で目覚めた議会がいくつか動き始めた」といいます。「じゃあ、全国の議会はどんな活動をしているのか」。それが議会改革度調査を開始するきっかけとなりました。

 しかし、いざ調査を始めたところ「ホームページもアドレスもなく、連絡先がわからない。パソコンが議会事務局にないのでアンケートに答えられない」地方議会も多く、大変だったと振り返ります。その後、形式を整えた地方議会が増えていき、質問項目も見直しが進みました。情報公開にとどまらず、住民が議会の活動に関心を持つための内容や、議員の提案能力向上に必須となる議会事務局強化がどのようになっているか、など「議会改革度調査2015」(
http://www.maniken.jp/gikai/2015gaiyo.pdf)では「情報共有」「住民参加」「議会の機能強化」の3つの観点で分析しました。

先進的な議会活動を情報発信、他議会にも広げる

 では、それぞれの観点はどのような要素をみているのでしょう。「情報共有」の観点では、本会議や委員会の議事録・動画・資料、議員や会派の賛否結果と理由、政務活動費、視察報告など、それぞれどれだけ住民に対して公開しているか、また公開した結果どうなったかについて検証を実施しているか、チェックしています。合わせて、ホームページ・SNS(会員制交流サイト)の活用、議会だよりの改善・工夫や広報に関する戦略の策定や検証も尋ねています。

 「住民参加」の観点では、議会傍聴のしやすさや議会報告会等の実施、住民からの意見受付がどのようになっているかみています。未成年を対象とした主権者教育などシティズンシップ推進のための取り組み、参考人招致や、公聴会の実施も調べています。

 「議会の機能強化」の観点は、議会本来の権限・能力を発揮するための機能強化状況がどうなっているかということに着目しています。例えば、地方議会運営の基本原則を定めた「議会基本条例」の制定や改正・検証、議会改革に関する実行計画のほか、法務担当職員を配置するなど議会事務局の強化、さらに議会図書室の活用などを質問に盛り込んでいます。

 中村事務局長は、調査開始以後「これまでみられなかったような活動を始めるような先進議会がいくつも出てきた」ことから、「これら新しい活動や、住民にとって利益を出すような取り組みを始めた議会の事例をピックアップし、全国に情報発信することで、まだ気がついていない議会や、これからどうやればと悩んでいる議会の参考になれば」と話します。調査結果をきっかけに「ほかの地方議会でよいと思ったところのものは取り入れる“善政競争”が起こり、進化を促すツールになってほしい」。議会改革の動きとともに始まった調査もその目的を広げていっています。

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