2017年6月27日火曜日

議会、抜本改革手つかず、欠かせぬ行政チェック機能

<日経新聞より>

常任委員会のインターネット中継、公用車の廃止、通年議会の導入……。各党の都議選公約には議会改革に関する項目が目立つ。東京都の小池百合子知事に「ブラックボックス」と断じられた都議会が汚名返上とばかりに、議会改革の実現を競い合う。

 今年2月の議会では議員報酬の2割削減や議会出席時の手当となる費用弁償(1日当たり1万~1万2000円)の原則廃止などを盛り込んだ条例が成立。これまでも議会改革は「ゼロ回答」だったわけではない。

 ただ、都の予算編成で慣例だった議会による200億円規模の「復活要望枠」について、小池知事が2017年度予算で廃止すると、対立する自民党は「議会軽視」と猛反発。慣習を守ろうとする議会と、そこにメスを入れようとする小池知事のせめぎ合いの構図は「改革」の名を借りた政局そのものでもある。

 都幹部は「議会の制度全体が慣例主義に陥っていた」と指摘する。早稲田大学マニフェスト研究所が地方議会の情報公開や住民参加などの現状を調査した「議会改革度調査2016」によると、都道府県別ランキングで都議会は36位に沈んだ。

 そもそも都民の政治参加を促す本質的な議会改革は手付かずのままといえる。審議のネット公開は本会議と予算特別委員会に限られ、議案ごとの個別議員の賛否も非公表だ。別の都幹部は「一部の議員だけでも関心を持って動けば、個々の規則は簡単に変えられるはずだ」と、これまでの不作為を批判する。

 前回都議選からの4年間は3人の知事が誕生する異常事態が続いた。猪瀬直樹、舛添要一の両氏は「政治とカネ」の問題で辞任に追い込まれた。都議会はこの問題の追及にほぼ終始した結果、都政を巡る議論が置き去りになった感も否めない。

 鳥取県知事を2期務めた片山善博・早稲田大大学院教授は「多様な意見を政策に反映させるのが議会の役割。そのためのまっとうな議論を目指すのが本当の議会改革だ」と指摘する。

 都議会の審議に臨む小池知事は都議の略歴や顔写真などが載った「東京都議会議員要覧」を常に手元に置く。質問に立つ都議のページを開きながら熱心にメモを取る姿は、質問内容から自身と質問者の距離感を見極めているかのようだ。

 都議選後の新たな議会は改革を進めるとともに、都政に対する健全なチェック機能を十分に果たせるか。その議会と小池知事はどう向き合うのか。知事と議会のパワーバランスは今後の都政の行方を左右する。(おわり)

 舘野真治、山内菜穂子、亀真奈文、飯塚遼、安部大至が担当しました。


http://www.nikkei.com/article/DGXLZO17775140W7A610C1L83000

0 件のコメント:

コメントを投稿