だいたいどこもそうだと思いますが、松阪市議会の一般質問には通告制度というものがあり、毎回、あらかじめ決められた期日までに質問テーマを届けておかないと、質問の機会が得られません。この12月の場合は、締め切りは11月30日の正午でした。
その締め切りの15分前、携帯電話が鳴りました。 「白猪山の風力発電の記者発表が、午前10時からあったはずだ」。 という内容を、地元の方が、教えてくれるためでした。 すでに、3つの質問項目を入れていたので、質問の割り当て時間(一人50分間)からして4つの項目はきついのですが、風力発電は、前市長の山中光茂氏が就任する前から取り組んでいたテーマで、山中氏が就任した直後から連続4回、一般質問で取り上げたテーマであるだけに、はずすわけにはいきません。 時間的に難しいのは承知で、急きょ、テーマに加えることにしました。 白猪山の風力発電は、前市長の、地元の100%同意(関係する自治会すべての同意)がなければ市長として同意しない方針を打ち出したことから、6年前に計画が頓挫していました。 しかし、市長が交代したら再び動きだす、と言われていました。 市長交代から2か月で早くも動きだしました。 それにしても、突然のことでした。 地元では、市職員が「法律が変わって、市として何もできません。粛々と進めざるを得ません」と語ったそうです。 「法律が変わった?」 「粛々と?」 実は、以前は、風力発電は法律にありませんでした。 ところが全国各地であまりにもトラブルが発生するので、平成24年の改正・環境影響評価法(アセス法)の施行で、風力発電も国の環境アセスを義務付けるようになったのです。 国が作成した環境アセスの手続きを示すフローを見て、驚きました。 この法律のもとでは、地元の市長が、事業者にモノを言えない仕組みになっています。 意見を言えるのは、知事です。 市長は、知事の「照会」に対して、「意見」する権限しか付与されていないのです。 事業者は地元説明会を開きますが、手続き上の住民意見は市長ではなく、事業者に提出され、事業者は知事の意見とともに、「評価書」を作成して国に提出するというのがおおざっぱな流れです。 国というのは、環境省ではなく、経済産業省です。 ご存じの通り、経産省は、環境影響評価をする役所ではありません。経済活動を促進したり産業振興を進める役所です。 では、環境省はどうするかと言えば、何もしません。 事業者が作成した「評価書」を、経産省が「審査」し、その結果の「送付」を受けるだけです。 知事や地元市長は、経産省の「審査」で「確定」済みの「評価書」の送付を受けるだけです。 すると、事業者は、国から「評価書」(お墨付き)をもらったとして「住民への周知」し、工事計画を経産省に出し、審査にパスすれば工事着工です。 計画地は地元の山でありながら、地元の市、県が主導ではなく、事業者と経産省のキャッチボールをフェンスの外で見守っているだけの仕組みです。 環境省作成の「環境アセスメント制度のあらまし」には、こうも書かれています。
「地方公共団体の環境アセスメント制度は、地域の環境保全のためにとても重要な役割を果たしています。しかし、一つの事業について、環境影響評価法と地方公共団体の制度による手続きが重複して義務付けられることは、事業者にとって過度の負担となってしまいます。そこで、環境影響評価法では、地方公共団体の環境アセスメント条例との関係についての規定を置き、手続きが重複したり、法の手続きの進行が妨げられることのないように配慮しています。」
要するに、国がやるから地方は邪魔をするな、という内容です。 この法律以前も、実は、環境アセスが行われていました。しかし、当時は法律に基づくものではなく、事業者の自主的なアセスでした。 地元住民や地元自治体に、これだけ環境に配慮しているので、どうかご理解ください、というものでした。 しかし、当時も、地元自治体には強制力をもって計画をストップさせる権限などありませんでした。 では、当時は、なぜ、計画を止めることができたか。 当時は、環境省が関係する外郭団体が、新エネルギー事業に対する補助金を交付していて、事業費(100億円前後)の半額程度は税金でまかなわれていたため、事業者はその補助金を得ようと申請をするわけですが、環境省が申請書類に地元同意(住民+地元首長)が得られたことを示す文書の添付を義務付けていました。そこで、事業者は無理にでも地元の人や、地元市長の同意書を求め、必死になりました。ここで市長がノーと言えば、補助金は得られないので、事業化をあきらめました。 実は、松阪市の場合は、山中前市長の前の市長が「同意書」にハンコを突いて、その文書が補助金交付団体のほうに提出されていたため、補助金の交付が内定していました。 のちになって、この文書の存在に気づき、一般質問で、このような文書の存在を指摘。山中・前市長の就任後、この文書による補助金の決定は無かったものとするよう、環境省の外郭団体に求めてもらい、決定は白紙撤回されました。 もう一つは、松阪市の市有林の存在です。 計画地の多くは市有林のあるところで、地権者である市が了承しない限り、計画は実現しません。 逆に市が了承すれば計画がほぼ決まったということにもなります。 今回は、「粛々と」国への申請手続きは進められていくかもしれません。しかし、今回の計画の90%は市有地の上で進められます。 市長がノーと言えば計画は実現しません。 この年末、市役所では環境課以外の部署とも連携し、市としての対応方向を検討したということです。新年1月7日には事業者を呼んで聴き取りをするそうです。1月下旬には環境保全審議会を開くとともに、新年度予算には審議会委員の報酬・旅費などを盛り込んだ予算を計上する方向で検討に入りました。 10月5日に就任した竹上真人市長が、どう、舵を取っていくのか。 12月8日の一般質問では「関係自治会の同意が前提である方針は変えない」との方針を明確にしました。 急きょ用意せざるを得なかった一般質問でしたが、12月議会でおこなっていなければ、3月議会まで機会はありませんでした。 そういった意味では果たせた役割は大きかったと思います。 話は戻りますが、前回6~7年前とはもう一つ大きな違いがあります。 前回は、風力発電は良いことという前提から始まっていました。 この問題をめぐって初めて質問したときすでに、先に触れた、秘密の市長の同意文書が出た後だったのです。 その後、関係自治会でも議論をされ、いくつかの自治会から市長に反対を求める文書が提出され、初めは慎重だった山中・前市長も、「100%同意」が前提とする方針を明らかにし、その前の下村・元市長の同意を撤回することで環境省の外郭団体の補助金の交付内定を白紙に戻したわけで、流れを逆転するためにかなりのエネルギーを使いました。 それに対し、今回は、風力発電は良いことという前提からものごとは始まらないということです。 それと、前回、ほとんど議論の対象しなかった災害への懸念が地元の中には広がっている点です。 白猪山のふもとの集落は江戸時代以降でも頻繁に山津波による壊滅的被害を受けた史実が残され、人々に語り継がれています。ここ数年、全国各地で起きている自然災害を目の当たりにし、山のてっぺん(尾根づたい)に道を付け、高さ120メートルの巨大風車12基をむすぶ作業道を尾根づたいに造っていき、さらには麓から大型機材を山に運ぶトレーラーが通る道を通していく計画、そして、山のてっぺん付近に駐車場を造るような計画が、許されてよいものかどうかは、できるものなら山の神さまに聞いてみたほうがよい話かもしれません。 事業者は、作業道は林道として活用し、山の上のほうにある間伐材を搬出できるなど林業振興につながり、雇用へとつながる。はたまた、観光名所になると言います。 ほんとうかな? でも、これって、経済産業省の「まち・しごと・総合戦略」(地方創生)にぴったり? 国は、ホイホイと事業を奨めても結果に対する責任はゼッタイにとりません。 原発がよい例です。 失敗で泣くのは地方や、その地域です。 地方を守っていくのは地方自治体しかありません。 1999年にかけて、地方分権が議論され、翌西暦2000年施行の新しい地方自治法で、国と地方は「上下・主従の関係」から「対等・並列な関係」に生まれ変わりました。 しかし、最近、どうも、為政者がそのことをわかってくれていないみたいな気がする。 何年か前に自民党が作成した憲法草案を一通り読ませていただいたが、そこにあったイズムは今の地方自治法とはどうも合わないみたい。 新しい年は、自治体議員は、もっと頑張らんといかんようですね。 |
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2016年1月4日月曜日
2015 年末に思うことあれこれ・・・・ ④
<松坂市議のブログより>
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