2018年8月4日土曜日

地方議員年金復活 なり手確保につながるのか

<熊本日日新聞より>

2011年に廃止された地方議員年金制度に代わる措置として、自民、公明両党は先の通常国会で、地方議員が厚生年金に加入できるようにする法案の成立を目指していた。ただ、自民の一部に異論が根強いことから法案提出には至らなかった。

 年金復活は、議員のなり手不足解消を訴える地方議会の要請を受けたものだ。先送りされたが復活を望む声は消えておらず、年金制度改革による支給抑制や、来年10月の消費税増税など国民負担が増す中、特別扱いとも言える政策は一層の政治不信を招きかねない。

 国会議員と地方議員には自身の掛け金と国の負担、自治体の負担で運営する独自の年金制度がそれぞれあったが、国会議員は06年に廃止された。都道府県や市町村の議員は、市町村合併に伴う議員数の削減によって年金財政が維持できなくなり11年に廃止された。3期12年間在職すれば他の公的年金と併せて受給でき、「特権的」との批判も根強かった。

 現在、専業の地方議員は国民年金にしか加入できない。全国の地方議員約3万3千人のうち専業は市議会で約4割、町村議会で約2割。年金復活案は議員を自治体職員とみなして厚生年金の加入資格を与え、引退後の生活保障を図ることが狙いだ。

 しかし、保険料は自治体と折半するため、年間約200億円の公費負担が新たに生じる。これとは別に、廃止された地方議員年金の受給資格者への給付は約50年先まで続き、累計1兆円超の公費が必要とされる。

 確かに地方議員のなり手不足は深刻だ。15年の統一地方選では全国町村議員の総定数の2割が無投票。60歳以上の町村議員は10年前より約2割増えて75%に達した。その要因として人口減少や高齢化、若者の流出が挙げられるが、自公両党はなり手不足解消のためには年金復活による議員の待遇改善が欠かせないとする。

 自治体の財政難や人口減少などから地方議会の定数と議員報酬は全国的に削減傾向にあり、市町村合併で議員1人当たりの活動範囲が広がるなど負担は増えている。このため、県内を含む全国地方議会の半数以上が、議員の厚生年金加入を可能とする法整備を国に求める意見書を可決している。

 しかし、年金の復活がすんなりと議員のなり手確保につながるだろうか。県内をはじめ各地方議員選挙で投票率の低下や無投票が目立ち、若手や女性議員が少ないのは、議員を取り巻く環境が厳しさを増しているためだけではなく、有権者と議会の距離が依然として遠いことも一因であろう。

 来年は統一地方選挙が行われる。まずは議会が有権者に身近な存在と感じてもらい、関心を持ってもらう取り組みが必要だ。政務活動費のずさんな使い方も改めなければならない。年金復活案は対症療法にすぎず、議員の負担軽減などの地方議会改革とともに、政治参加をしやすくする幅広い環境整備が求められる。


https://kumanichi.com/column/syasetsu/569211/

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