2018年11月2日金曜日夜、千葉市内にてNPO法人6時の公共が開催した「そぉだったのか!地方議会・地方議員パネルディスカッション」。地方の民主主義を回していくために不可欠な「地方議会」について、地方議会議員や議会事務局職員をパネリストとして迎え、市民や学生、ビジネスマンなど、多様な参加者と一緒に、そのリアルに迫りました。
※千葉県界隈の地方公務員等が中心となり設立したNPO法人「6時の公共」設立趣旨や本パネルディスカッションの開催趣旨についてのコラム(2018年11月1日)はこちら
地方議会のリアルを垣間見て
地方議会に関心を持ってもらうことを意図して、パネリストも参加者もハラハラするような演出の「際どい」質問が繰り出された2時間弱。「すべてが新鮮!」「議員の生の声を聞けるナイスな企画!」という市民の声から、「地方議会を多角的に知ることができた」という現役公務員の感想まで多く寄せられました。
県議会、市議会という異なる階層の議員や、議会の運営をサポートする議会事務局の職員が登壇したことで、自治体の規模の大小による議会の違い、議会質問の練り方や詰め寄り方、議場「外」の裏舞台でも繰り広げられる行政マンと議員との駆け引きのドラマ…、ふだん知ることができない世界を感じ取っていただけたようです。
間もなくやってくる統一地方議会議員選挙を前に、会派など議員としての立ち位置を考える参考になったという政治家志望の参加者もありました。
議会質問の「表舞台」、そこに至るまでの地道な活動
議会の表舞台、議会質問。地域の課題に対する解決策や政策提言を、質問という形式で、議員から首長(知事や市長など)に問いかけ、首長や幹部行政マンが答弁するという一連のプロセスです。この議会質問には議員それぞれの問題意識や個性が現れるところですが、これら議会質問はいったいどのような着眼点や過程を経て用意されているのか、議会中継や議事録からは計り知れない、議員にとっては手の内を明かすような議員活動の核心に迫る問いを投げかけました。
パネリスト議員によると、議員ごとに方法や比重は様々であるものの、業界団体や組合などの意見・要望や、「この制度や仕組みはおかしいよね」という市民の声などを集める、まさに「足でかせぐ」手法は欠かせないようです。特に、議会事務局の職員数も少なく、政務調査機能が比較的弱い基礎的自治体の議会では、各分野の専門家や実務家などの頼れる相談者を「外に」たくさん作ることも重要とのお話もありました。
また、元行政マンの議員の方は、各地方ニュースの情報収集、役所が作成する膨大で難解な資料の読み込み、民間の動き方との比較など、自分のまちの状況だけでなく、全国の都道府県や県内のすべての市町村の状況を徹底的に調査し、緻密な分析・比較検討を土台に攻め入る手法も紹介されました。
議会質問のための地道な活動を目にする機会はなかなかありませんが、相当の準備をした上で地域の課題に真摯に向き合う姿が浮かんできます。
地方議会をライブ感ある空間へ
このような努力の積み重ねの上に成り立つ議会ですが、インターネット中継・録画放送も一般化し、一部の方は議場の様子を見て「おや」と思った方も少なくないのではと思います。質問する議員も答弁する首長も、手元の原稿を淡々と読み上げているようで、単調かつ退屈なものだと。
地域の重要な意思を決定する機関であるからこそ、かつてながらの予定調和的な進め方ではなく、ライブ感ある討論型の議会に変えていけたら、人々の関心をもっとぐっと引き寄せることができるかもしれない、そんな仮説を立ててみました。
まず、指摘されたのは、現在の議会の運営上の限界です。議員の質問に対して執行部(首長や幹部行政マン)が答弁する一問一答。ましてや、首長に代わって、幹部行政マンが答弁する場面では役所の立場を越えた発言ができるはずもなく、生々しい議論は期待できません。
自分の発言に自分で責任をとれる議員同士でなければ、丁丁発止の議論は難しいのでしょう。個々の議員が執行部に質問する「議員vs執行部」ではなく、議員間の直接的でダイナミックな討議(ここを明るみにしたらきっと面白い)を深め、議会一丸となって執行部と向き合い、地域課題に向けた解を緊張感と信頼を持って導き出す空間に転換していく発想も、これからさらに必要となってくるかもしれません。
議会の面白いシーンの見分け方、行政との「裏舞台」のドラマ
ただ、よくよく目を凝らすと、議会という「表舞台」の面白みを感じたり、議場以外でも展開される地方自治の「舞台裏」のドラマは数々存在するのです。
例えば、パネリスト議員が手法として紹介してくださったように、まるで屁理屈を捏ねようとする執行部答弁の逃げ道を一つ一つ論理的に潰していき、最終的に辿り着くのはこの答えしかありえない、というところまで徹底的に追い詰める、そんな議員と執行部の駆け引きは、間違いなく興味深いシーンであるはずです。
また、もう一方の議員が指摘されたように、これは日本的意思決定の方法とも言えますが、未然に周到な行政・議員間の意見調整の駆け引きが繰り広げられているのが、地方行政の姿との側面があります。
議場の場で揉めに揉めて、議案が通らなかったとすると行政運営も滞り、大きな責任問題になります。議員も、翻って市民の不利益となる事態は避けようと考えますので、議場に挙げられる前の段階で案件の説明を受け、議員の目線からの助言や見解も反映し、あとは演舞場の議場で承認を得るところまで詰めておく水際作戦が日々展開されるのです。
透明性の観点から、このやり方への良し悪しの意見はあるかもしれませんが、もしもこの過程が文字通りドラマ化(見える化)されたとすれば、それは時に頭脳プレーであり、感情的であり、非常にドラマチックなシーンの連続とも言えます。
面白くなくてもいい、「役に立つ」議会
いずれにしても、専門的でトリッキーな地方自治の運営に関して、はたまた議場でのやり取りについて、さらに市民からの強い関心やプレッシャーが日ごろから寄せられるようになれば、それはもっともっと行政運営が、良い意味で刺激的なもの、改善圧力が働くサイクルとなるのではないかと考えます。動画投稿サイトで人気のゲーム実況のような、地方議会実況動画なんてものがあったら、面白いかもしれません。
議会の面白さ、わかりやすさが話題となる一方で、パネリストからは、そもそも「議会はおもしろくなくていい。市民にとって役に立つ場所でありさえすれば」という意見も飛び出しました。たしかに、議会を「面白く、わかりやすく」することも必要な観点ですが、それはあくまでも、プラスアルファの要素に過ぎません。果たして、今の地方議会は、市民にとって役に立つ議論や意思決定ができているのか。そんな本質的な問いかけの意味を込めた「議会愛」にあふれるメッセージのように受け止めました。
若さだけが「武器」ではない。政策能力、胸を張れる議員
こんな質問もしてみました。議員の年齢構成に着目し、「議員に定年制を設けて議会を若返らせてはどうか」と。全国的にも地方議員の高齢化の問題が顕著だったり、千葉県では右側と下側を中心に無投票選挙区(選挙の立候補者数が定数よりも少なく、いわば不戦勝で当選が決まるエリア)が広がる実態もあるなど、議員の多様性を確保できず、ひいては、市民の多様な意見が議会に届きにくい状況が生まれているのではという問題意識からです。
これには40代(議会界隈では若手)のパネリスト全員から、揃って反対の立場の回答が。年齢は有権者が議員の質を判断するための一要素に過ぎないというのが、その理由です。確かに、その通りかもしれません。
しかし、小規模な自治体であればあるほど概して低い議員報酬、いざ議員になっても年功序列の暗黙の分厚い壁があるなど、若手議員が登場・活躍しにくい制度・風習があることも事実のようです。これはもう少し、何かしらの手立てがあってもいいような気もします。
また、巨大で強力な権限を持つ行政機関に対して、議会による監視機能、政策形成能力は、地方分権下のこの時代、まだまだ体制的に不十分であるとのコメントも出ました。話題となった議会図書室のレファレンス機能を活用する策なども参考に、名実ともに二元代表制の一翼としての議会の体力強化についても、まだまだ議論の余地がありそうです。
「行政と同じ土俵レベルで政策議論のできる議員、市民のために政策を決めているのは議会だと胸を張って言えるのか」。こんな挑戦的な問いに、正々堂々とYESと答えることができる、市民のために頑張る議員。そんな議員を選挙で選び、議会に送り込むことができるかどうかは、有権者たる市民の目利き力にかかっているのです。
動画配信、いよいよスタート
さて、6時の公共では、まちづくりをパソコンやスマホで学んでいただける動画配信サービスを、いよいよ12月1日からスタートします。
公開初回は、この記事で紹介したパネルディスカッションに加え、6時の公共が定期的に開催する「みんなの学習会」記念すべき第1回目、所有者不明土地という公共的課題をテーマに、地域の課題解決に取り組む担い手について考える内容です。
平日夜の学習会に参加できない方々も、6時の公共にインターネットを介して参加いただけることを期待しています。
※動画の視聴方法については「6時の公共」公式サイトをご覧ください。
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