2018年12月24日月曜日

【近づく統一選 地方議会は今】増えない女性議員 「男の仕事」根強い意識

<中国新聞より>

「幼稚園、行くよ」。12月6日の朝、広島県議会の女性議員は2歳の三男と広島市内の自宅を出た。近くの駐車場まで手を引き、車のチャイルドシートに座らせた。県議会定例会が始まるこの日、女性県議はまず中区の幼稚園へ車を走らせた。三男を預けた後、10時すぎに登庁。10時半に議場に座り、湯崎英彦知事たちと向き合った。
▽仕事にやりがい
本会議や委員会などの会議のほか、執行部と質疑をするための政策チェックや聞き取りなど、年間の登庁日は100日を超す。小学3年の双子の男児も含め、3人の送迎などの子育てはウェブデザイナーの夫と分担する。それでも「心身ともに余裕はない」と語る。2013年夏、別の女性県議に誘われ、政治を志してから5年余りが過ぎた。有権者の悩みをくみ取り、行政に伝える仕事にやりがいを感じている。同世代に政治の面白さを伝えたいとの夢も持つ。
だが、男性との違いを感じる場面は多い。ほかの県議と同じように、人脈を広げるために業界団体や住民と会食したいと思うが、子育てで時間がないためほぼ行けない。一方で、久しぶりの会食で繁華街を歩いていた時には、目撃した地元住民から「子どもをほったらかして飲み歩いとる」とうわさされたこともある。
有権者や男性県議たちが古い「女性像」を自身に求めていると感じるたびに、気がめいる。「女は家を守るもの、という社会の意識は根強い」。女性が議員になるのが当たり前という意識がより広がらない限り、増えないと考えている。
広島県議会の現職64人のうち、女性は6・3%の4人にとどまる。5県議会の合計でも23人で、現職の233人のうち9・9%にすぎない。共働きや人口減少に伴う労働力不足などで働く女性が増えている社会との間で、ギャップは確実に広がっている。
▽候補者探し難航
ことし5月、女性の声をもっと政治に反映させようと「政治分野の男女共同参画推進法」が施行された。女性の候補者数を男女均等にするよう努力義務を課され、各政党は「女性擁立」の掛け声を強める。
 目標数値を掲げるのは、共産党(5割)立憲民主党(参院選の全国比例で4割)国民民主党(3割)。このうち国民民主党は公認や推薦時の活動費を男性より手厚くする支援にも踏み込む。社民党は議員の一定数を女性に割り当てる。
 一方、自民党は一般女性を対象に政治塾を定期的に開催。公明党は児童虐待防止など女性の視点で政策を訴える街頭活動を進めており、日本維新の会は候補者の発掘に向けて一般女性との意見交換会を開く。
 だが、現実は厳しい。ある政党の広島県組織は、組織運営を担う常任幹事10人のうち女性は1人。衆院選候補者でもある女性は、来年4月の統一地方選に出る女性を探すが、難航している。昨年度は女性の政治参画をテーマに据え、30人規模の政策スクールを6回連続で開いた。ただ、期待した「議員になりたい」との反応はなかったという。
 女性議員が少ない理由を調べた経験のある山形大人文社会科学部の金子優子教授(行政学)は「社会に漂う『政治は男の仕事』との雰囲気が最大の壁」と語る。町内会やPTAの役員など「地域の顔」に女性が増えても、政治家にはなお壁があると指摘。「人口減少が進む地域では特に、女性議員を増やさないと女性がいなくなるというぐらいの危機感が要る」と警鐘を鳴らす。

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