地域住民の代表であるはずの地方議会が、住民から厳しいまなざしを向けられている。政策立案を含めて仕事ぶりが見えづらいとの不満は強く、政務活動費を巡る不正も絶えない。担い手が減り、女性の参画も進まないという課題も浮かぶ。2019年4月の統一地方選は中国地方で5県議選と20市町村議選が予定される。議会と住民の意識にずれはないか、点検する。
府中市議会(定数20)が11月上旬に市生涯学習センターで開いた議会報告会で、住民の男性が声を荒らげた。「地域が安全で豊かになるような議論を、もっとしてくださいよ」。市議会への苦言だった。
ことし4月の市議選は初めて無投票だった。改選後初となる議会報告会では、テーマの一つに、議員のなり手不足の解消に向けた「議会改革」を据えた。会場を昨年の倍の8カ所に増やし、幅広く住民の意見を吸い上げる計画だった。
しかし質疑は、7月の西日本豪雨を踏まえたもう一つのテーマの「防災」に集中した。加藤吉秀議長(69)も、議会改革への意見は「甚だ低調だった」と認める。わずかに寄せられた声は、議員の仕事ぶりへの手厳しい指摘ばかりだった。
市議会は定数割れも一時ささやかれたほどだった改選を受け、6月に特別委員会を設置。定数や報酬、政務活動費の在り方について、20年春をめどに方向性を示そうと議論を始めた。危機感は募るが、住民の関心との隔たりは大きい。
議員のなり手不足は各地に広がる。中国地方ではこの1、2年で議員選の無投票が急増し、市議選でも続出した。各議会は対策を練るが、多くは、候補者の減少をにらんで定数を減らしたり、候補者を増やすために報酬や政務活動費を引き上げたり、といった従来の議論にとどまる。
11年に廃止された地方議員の年金を、自治体職員の厚生年金に組み込む形で復活させる動きもある。改革なしに待遇改善だけを先行させた「お手盛り」に映れば、「住民感覚とのずれがさらに広がる」との冷ややかな見方もつきまとう。
総務省の有識者研究会が3月にまとめた報告書によると、一般議員の平均報酬月額は市議会が40万6千円、町村議会が21万3千円。報告書は「小規模市町村では議員報酬だけで生計を立てられない」と指摘しつつも、抜本的な議会改革が要ると提言する。報酬を副収入的な水準に抑えて兼業議員を増やすか、報酬を上げて少数の専業議員で運営するか―。ただ、小規模な市町村議会を中心に現実的でないと異論が相次ぐ。
山口県の上関町議会(定数10)は7月、夜間や休日に一般質問や委員会を開いている長野県喬木(たかぎ)村の議会を視察した。平日昼間が中心の議会運営を見直し、兼業でも活動しやすい環境にする試みだ。離島もある町では容易ではないが、導入の道を模索するという。
国立社会保障・人口問題研究所の推計で、町は45年までの人口減少率が中国地方の市町村で最大だった。2月の町議選は土壇場で11人の候補者がそろい、無投票こそ避けられた。それでも、地元での原発建設計画を巡り賛否の議論で活気に満ちていた選挙戦は、様相を異にしている。
40年以上前は20人以上だった定数は今や、1桁目前となった。西哲夫議長(71)は「これ以上減らせば議会の体をなさなくなる」。来年2月には地元の中学生を招く模擬議会を初めて開く。地域で後進を育てる機運につながればと願う。(松本大典、山崎雄一)
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