議会活性化に欠かせない事務局の風土と意識改革
私は25歳で議員になった。収賄事件で市長逮捕という事態により行われた市長選と同日の市議補選に初めて立候補して当選した。周りからは「マサカのヒサカ」と可愛がられたものだ。
議員になって、学生時代に学んだ「地方議会」や「地方議員」とはかなり隔たりある実態に日々がくぜんとした。古びた先例や慣習が重んじられ、年功序列のタテ社会における〝実力〟は必ずしも政策立案能力や提言力とは結びついていなかった。そして、不思議なことに「力のある議員はわざわざ質問や質疑はしない」らしかった。
しかし、今は違う。「地方議会」と十把一からげに語ることはできないが、いずれの地方議会でも「変わらねばならない」との危機感が生まれている。そして、「議員定数の削減」や「議員報酬の削減」は有権者受けのする公約かもしれないが、地方議会をまっとうに機能させ、行政とまっとうに対置できる〝活性化した状態〟にするには、安易に掲げてはならないと気づく議員も増えている。議会基本条例制定ブームはまさにそうした地方議員の意識改革に裏打ちされてきたものだ。
昨年5月、議長に就任してから「議会事務局活性化」が取り組むべき優先課題であると痛感している。今の議会事務局職員大半の意識は「議員のお世話役」の域にとどまっている。それこそ、市民感覚からは既に時代遅れに思える先例や慣習に固執するのが仕事のようだ。「おかしい」と感じても、議員に進言することを避けるのは「余計な口出し」をするとで〝返り血〟を浴びることを恐れる気持ちがあるからだろう。
このような事務局風土の中で、職員はいつのまにか「企画力」と「発想力」を喪失してしまっているように見える。先ごろ私は議会事務局に「まずは、Plan―Doからスタートしてほしい!」と申し伝えた。議会事務局の仕事は議会運営をより良くしていくための縁の下の力持ちであり、議会がより良くなれば結果的に市民福祉が向上する。この極めて当然の目標を議会事務局で再確認することが重要だ。「思考停止」を美徳とするかのような議会事務局風土を変えて、議員とともに積極的により良い議会づくりの提案をしてほしいとお願いしたのだ。
私は毎日、議長室に出勤している。職員にはうっとうしい存在かもしれないが、だからこそ見えてきたのは議会事務局に必要な意識改革である。議会活性化論で議会事務局の充実強化が語られることが多い。そこには職員不足も指摘されているが、頭数の問題だけではなさそうだ。
そしてもう一つ。行政職員の異動先として位置付けられている議会事務局で「議会の利益」につながることをし過ぎると、それが首長部局には面白くない結果をもたらすこともあるだろう。首長部局に異動することを思えば、なるべく「余計なことはしない」意識になりがちだろう。しかし、議会のために大暴れした職員こそ評価されなければならない。その土壌づくりにこそ議長が汗をかきたいものだ。
いわなが・ひさか 1977年神戸市生まれ。99年中央大法学部卒。中小企業金融公庫(現日本政策金融公庫)勤務。2002年4月多摩市議。現在5期目。06年明治大公共政策大学院修了。17年5月から議長。
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