2016年4月16日土曜日

ショッピングセンターの集客力を期日前投票に~共通投票所の設置は見送り―習志野市選管事務局に聞く

<政治山より>

46日、改正公職選挙法が成立し、投票日に市区町村内のどの投票所からでも投票できる共通投票所の設置や期日前投票所の受付時間延長などが可能となりました。投票率の低下に歯止めをかけるため、7月の参院選では駅前やショッピングセンターなど人通りの多い場所に期日前投票所を設ける自治体が増える見通しです。

 千葉県・習志野市は市内3カ所のショッピングセンターに期日前投票所を設置する予定で、投票率向上のための施策を検討しています。同市選挙管理委員会の上野久 事務局長にお話をうかがいました。

習志野市 上野久 選挙管理委員会事務局長
習志野市 上野久 選挙管理委員会事務局長

買い物客と働く人の投票ハードルを低く


政治山

まず始めに、今夏の参院選で共通投票所を設置する予定はあるのでしょうか。

上野氏

現在のところ共通投票所の設置は予定していません。当市では期日前投票所をショッピングセンターに設置する予定ですが、投票日に設置できるようになった共通投票所とはまったくの別物なので誤解のないように周知が必要と考えています。

政治山

では設置を予定している期日前投票所についてお聞かせください。

上野氏

参院選では、イオン、イトーヨーカドー、モリシア3カ所のショッピングセンターに期日前投票所を設置します。買い物に訪れた人や、そこに勤める人たちが投票しやすい環境を整えることで、投票率の向上を見込んでいます。

政治山

どのように設置するのでしょうか。

上野氏

イベント会場や催し物のコーナーにテントを設置し、周囲、特に上部から見えないようにします。それ以外は従来の期日前投票所で行われている通り、選挙人(投票者)の確認と投票の受付を行います。

同席した木村たかし 習志野市議
同席した木村たかし 習志野市議

おもてなしのプロに期待、証明書で割引も


政治山

ショッピングセンターならではのメリットはありますか。

上野氏

彼らは商売のプロで、おもてなしのプロでもあります。バリアフリー化は徹底していますし、空調設備も充実しています。また、広報のプロでもあり、私たちが宣伝するよりも効果的に、選挙実施の周知と投票促進の施策を打ち出せるものと期待しています。

政治山

具体的にはどのような施策を予定しているのでしょうか。

上野氏

まだ先方とは協議中ですが、例えば折込チラシで期日前投票所が設置されていることを大々的にPRしたり、投票証明書を見せると駐車場がタダになったり買い物が5%OFFになったり。それを3カ所で差別化し競い合ってもらいたいとも考えています。

政治山

なるほど。確かに折込チラシは公報よりも身近ですね。注意すべき点はありますか。

上野氏

あくまでも投票行動を促すのが目的であって、特定の政党や候補者、政策を主張するものであってはなりません。そこは厳しくチェックしていくつもりです。

習志野市 上野久 選挙管理委員会事務局長

受付時間の延長は実施せず、費用負担も最小限に


政治山

期日前投票所は全部で何カ所設けるのでしょうか。

上野氏

今回はその3カ所のみとなります。ショッピングセンターへの設置は商工振興の側面もあり、期日前投票する人には是非そちらに足を運んでいただきたいと考えています。したがって役所や公共施設での投票受付は予定していません。

政治山

今回の公選法改正では、期日前投票の受付時間を延長できるようになりましたが。

上野氏

期日前投票所の投票受付時間は午前8時半から午後8時ですが、今回はその延長を予定していません。店舗によって営業時間が異なるためですが、今後は、投票時間に合わせて朝市などを企画してもらうとありがたいです。

政治山

設置にかかる費用について、お聞かせください。

上野氏

費用の多くは、選挙執行にかかる予算として国で賄われます。テントなど備品のレンタル代がかかりますが、従来でも扇風機やストーブ、バリアフリーのための資材などが必要なため大きく変わりはありません。ただし3カ所の期日前投票所と本庁を繋ぐネットワークが必要なため、その費用は別途生じることとなります。

習志野市の旧庁舎。新庁舎は建設中

習志野市の旧庁舎。新庁舎は建設中

インターネット回線で情報共有、将来は投票も


政治山

選挙人データをネットワークで共有するためには専用回線が必要なのでは。

上野氏

専用回線が望ましいのですが、費用との兼ね合いから今回はセキュリティ対策を施したうえでインターネット回線による運用を予定しています。

政治山

インターネット回線を用いて選挙人データを共有するのであれば、投票日もすべての投票所をネットワークで繋ぐことで、住民がどの投票所からでも投票できる「共通投票所」も運用できるのではないでしょうか。

上野氏

仕組みとしてはその通りなのですが、期日前投票所は3カ所なのに対して、投票日に設置する投票所は26カ所となります。投票に訪れる人の数も大幅に増えるため、運用コストは増大しデータ通信量も増加します。端末や回線の不具合などリスクの検証も間に合っていません。「共通投票所」の設置にはしばらく時間がかかると思います。

政治山

技術的な検証を経てネットワーク上で本人認証ができるようになると、自宅やオフィス、スマートフォンなどから投票できるインターネット投票の実現に向けて大きなステップとなりそうですが、どのようにお考えですか。

上野氏

あくまでも個人的な感想ですが、遠からずインターネット投票は実現すると思います。もちろん二重投票やなりすましなどの不正投票を防止する仕組み作りは必要ですが、そこは将来的にマイナンバーを利活用することで厳正な本人確認が行えるようになるでしょう。投票環境を整え、投票率を上げるための施策については、あらゆる可能性を前向きに検討すべきと考えています。
聞き手:市ノ澤充(いちのさわ・みつる)

http://seijiyama.jp/article/news/nws20160415-5.html

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