専門家の知識や民意を施策に反映させるため、東京都が設置した審議会など「付属機関」の三割に、都議が委員として就任し報酬を得ていることが、本紙の調べで分かった。首都圏の一都六県では割合が最も高く、政令市などは議員の委員兼務を原則禁じている。国は「兼務は適当ではない」との見解を示し、識者も「都へのチェック機能を果たせるのか」と疑問視している。 (木原育子、榊原智康)
本紙は、四月時点で都議の委員兼務状況を調査。計百三十八付属機関の34%に都議がいた。内訳は知事の委嘱が二十八機関、区長が委嘱する各区の消防団運営委員会が十九機関。計九百三十六委員のうち17%の百六十人が都議で、都議会定数(一二七)を超え、複数の委員をする都議もいた。
関係者によると、都は長年の慣習で、都議選のたびに、知事が委嘱する委員のうち、都議枠の委員数を議会に提示。議会は勢力に応じて会派ごとの委員数を決め、各会派が都議に割り振ってきた。議会改革を掲げる小池百合子知事も、七月の都議選後、従来通り都議に委員を委嘱した。
付属機関の会合は、年十回以上のものもあれば、一回のものもある。都によると、委員への報酬は一回の出席で一万七千~二万三千二百円。二〇一四年度決算で年一億六千百万円だが、このうち都議への支払額は算出していない。
国は一九五三年、議員の委員兼務を「議決機関(議会)と執行機関(行政)の分立の趣旨に反する」として「違法ではないが適当ではない」との見解を示した。総務省の担当者は「見解は今も変わっていないが、自治体が説明責任を負うべき話。適切に判断してもらいたい」と話す。
都の担当者は国の見解を把握しているとした上で、「審議内容が都民に影響がある場合は、都民の代表として都議を選任している場合もある」と説明する。
首都圏では、五つの政令市と群馬県が議員の委員兼務を原則禁じる。さいたま市は「議会は(有権者が別々の選挙で首長と議員を選ぶ)二元代表制の下、市長その他の執行機関に対して抑制と均衡の関係にある」との市議会基本条例を議員提案で成立させ、二〇一〇年から施行。議長名で市側に付属機関の委員に市議を任命しないよう求めた。
群馬を除く首都圏の五県議会は、県議が委員にいる付属機関の割合は20%台だった。
専修大の白藤博行教授(地方自治法)は「都議が審議会の委員になって執行機関側に入って、都へのチェック機能を果たせるのか。東京には専門家がたくさんいるし、議員は審議会ではなく、議会で意見を述べればよい」と指摘する。
<付属機関> 法律や条例の定めにより地方自治体に設置される審議会などを指す。地方自治法に規定がある。首長らの諮問で都市計画や教育振興など決められた議題について議論、答申し、自治体の施策に反映させるのが一般的。委員は専門家や住民、団体の代表者らが多い。東京都は要綱で、専門知識の導入や公正の確保、利害の調整、民意の反映を特に必要とした場合に設置するとしている。
(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017092190071036.html |
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