2018年4月21日土曜日

富山県議会 基本条例が施行 信頼回復へ「改革会議」

<毎日新聞より>

議会の基本理念や運営ルールなどを定める富山県議会基本条例が1日に施行された。2016年に政務活動費の不正問題が相次ぎ、3県議が辞職したことを受けた議会改革の一環。全国では32番目の制定だ。不正で告発された元県議会副議長は3月末、詐欺罪で富山地裁に起訴されたばかり。県民の信頼回復に向け、“議会の憲法”である同条例を基に、議会や議員はどこまで変われるだろうか。【鶴見泰寿】

    不正問題が契機

     16年7月、矢後肇元副議長が書店の領収書を偽造するなどして書籍を購入したと偽り、政活費を不正受給したことが判明して辞職した。その後、県内では富山市議会など他の市議会でも相次いで不正が発覚。石井隆一知事が議会基本条例制定を求めたこともあり、県議会は制定に向け、17年6月に全会派による検討会議を設置。9回の協議を経て、今年2月定例会で成立した。
     条例には、「二元代表制の一翼を担う県議会が、県民の多様な意思を県政に反映させる」と明記。各会派の議員でつくる「議会改革推進会議」を設け、毎年度、行動計画を策定し、改革の進捗(しんちょく)状況を公表することを定めた。また、議会活動の透明性確保と情報公開の推進も盛り込んだ。

    政活費を定めず

     だが、今回の条例では、制定の契機となった肝心の「政務活動費」の文言は入っていない。県議会事務局によると、議員活動において「厳しい倫理意識に徹する」とのいわゆる「倫理規定」で政務活動の問題も担保するとしている。
     早稲田大マニフェスト研究所(東京都中央区)によると、条例の規定が不正の歯止めになっているかは調べ切れていないとしていながらも、富山を含めた道府県レベルの32議会基本条例のうち、20条例が項目で「政務活動費」を明記しているという。
     同研究所の中村健事務局長は「今回の条例作りは政活費不正がきっかけ。全国の都道府県レベルでは後発の議会基本条例でもあるのだから、政務活動についてきちんと盛り込むべきだった」と話す。さらに、倫理規定を適用するとの主張については「倫理規定というものは『してはいけない』『しません』という後ろ向きな姿勢に過ぎない。本来、前向きな姿を示すのが議会基本条例であり、『政務活動』という言葉の有無で、立ち位置が全く異なる」と本気度に疑念を呈する。

    問われる精神

     また、富山大の青木一益教授(政治学)は今回の条例について、他自治体の条例と同様に規定の末尾に「努める」との文言が多用されていることに注目。「条例内容がそのまま実現されるわけではないことを意味している。具体性がなく議会運営を大きく変革するという改革精神が見えない」と批判した。
     その一方で「議会改革推進会議」が行動計画や進捗を公表する規定を高く評価。青木教授は「今後は、行動計画の策定を有効利用し、県民参加による内容チェックや改善点を次年度に反映させる仕掛づくりなどの工夫が求められる」と訴えた。
     “開かれた議会”を目指す富山県議会。政活費不正問題を乗り越え、同会議が県民とどう関わって、議論を深めていけるのか。改革精神が問われている。

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