2018年4月5日木曜日

地方議会改革 住民自治考える出発点に

<熊本日日新聞より>

人口減少と少子高齢化により、小規模自治体議員のなり手不足が深刻化しつつある。そうした事態を打開するため、総務省の有識者研究会は、現行の地方議会制度に加え、新たに「多数参画型」「集中専門型」の二つの仕組みを議会が選べるようにする報告書を総務相に提出した。

 「多数参画型」は、サラリーマンや公務員など別に本業を持つ議員が非専業的に活動。本業と両立できるよう議会は夜間や休日を中心に開き、議員報酬も副収入的な水準に抑える。議員との兼業・兼職制限を緩和することによって、自治体と取引がある企業の役員や、他自治体の職員からも選出できるようにした。

 一方、「専門型」は、少数の専業的議員で構成し、報酬も生活給を保障する水準にする。重要議案がある場合には、審議に有権者から選ばれた「議会参画員」の参加を認める。議決権はないが、参加した日は費用を支払う。公務員が立候補して落選した場合や、議員を務めた後の復職制度も設ける。

 ただ、「多数型」は議員が兼業に、「専門型」は議員の数が従来より少なくなるため、多様な地域の課題を十分把握することが難しくなり、執行部に対する監視機能が低下するのでは、との懸念がある。また、夜間・休日を中心とする議会開催に対し、「限られた時間で適切な審議ができるのか」といった疑問も指摘されている。

 政府は早ければ来年の通常国会で法改正を目指すが、全国町村議会議長会などは「地方分権改革に逆行する」などと反発しており、実現は見通せない。

 議論のきっかけは、人口400人余と過疎化、高齢化に悩む高知県大川村が昨年夏、将来の議会維持に不安を感じ、議会廃止と「町村総会」の設置を検討し始めたことだった。全国に同じような悩みを抱える自治体は少なくない。

 全国町村議会議長会によると、全国927の町村議会で、60歳以上の議員の割合は75・3%(2017年7月1日時点)と07年に比べて20ポイント上昇。年代別の割合では60~80代が増え、30代は微増、20代と40代、50代は減少した。平均年齢は3歳アップの63・6歳で、なり手不足が議員の高齢化に拍車を掛けているとみられる。

 15年の統一地方選では改選数の21・8%が無投票だった。県内の町村議員選でもここ数年、無投票が目立ち、投票率の低下も顕著になりつつある。なり手不足に加え、議会への有権者の関心も低くなっていることがうかがえる。

 五木村が一時期導入した議員報酬の成果主義制度や、御船町などでの通年議会など、県内でもこれまで議会改革は行われてきた。だが、制度設計だけではなく、形骸化が指摘される議会の存在感や有権者の自治意識を高める方策、さらには若者の主権者教育にも力を入れるべきだろう。人口減が進む中、住民が自分のまちづくりにどう関わっていくのか。研究会が示した報告を、住民自治を考える出発点にしたい。


https://kumanichi.com/column/syasetsu/411814/

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