2018年4月9日月曜日

地方議会改革/柔軟な発想で議論加速を

<高知新聞より>

人口減少や少子高齢化が進んだ町村の、議員のなり手不足をどう解消するのか--。
 昨年、土佐郡大川村が全国に発した問い掛けに、総務省の有識者研究会が報告書を公表した。ただし、この報告書は「一つのたたき台」にすぎない。今後、国と地方の双方向の議論に住民も参加して、内容を充実させる必要がある。
 報告書は大川村が一時検討した、住民が直接審議する町村総会について、有権者のほとんどが勢ぞろいすることが前提のため、「実効的な開催は困難」と退けた。
 ならば町村議会の在り方をどう見直していくか。研究会は、小規模な市町村では、現行の議会以外に、二つの新タイプも条例で選べるようにするとした。
 一つは「多数参画型」で、集落や小学校などで選挙区を設け、仕事を持つ議員が夜間休日を中心に運営する。自治体と取引のある企業役員や、他の自治体の職員らも議員になれるようにして、議員報酬は副収入的な水準にする。
 もう一つの新タイプは、十分な議員報酬を支給し、少数の専業議員で構成する「集中専門型」。多様な民意を反映するために、裁判員のように有権者からくじなどで選ぶ「議会参画員」を設ける。
 大川村のケースでも、議員のなり手不足の背景に、議員報酬だけでは生活できないことや、議員との兼業制限の壁が考えられた。
 そうした面から対策を検討したのが、研究会の報告書だろう。だが、その内容以前に、研究会が大学教授らだけで構成され、非公開で進められたことに地方の側から反発の声が上がっている。
 全国町村議会議長会は「地方議会の環境は地域によって異なり、類型化できない」とし、国が新制度の枠組みを作り、地域が選ぶのは「地方分権改革に逆行する」と批判する。もっともな指摘だ。
 国主導の進め方で地方との対立が深まれば、改革自体が停滞しかねない。今後、国は地方分権の趣旨に沿って、地方と「対等」の立場で議論を進めるべきだ。
 報告書によれば、2015年の統一地方選で人口千人未満の議会では約65%が無投票だった。地方議会の側に住民から「遠い存在」と受け止められているという危機感が十分なら、国に反発するだけでは責任は果たせまい。
 今回の現行プラス2類型の選択肢は、あくまで例題としてとらえ、柔軟な発想で議論を活性化させるべきだ。地方議会は執行部のチェック機関であり、存廃は民主主義の根本にかかわる。改革は待ったなしだ。
 地方の側から国に提案する場合、できる限り幅広い住民から意見を聞き、議論に巻き込んでいくことが関心を高めることにもつながる。特に若者や女性の割合が低いことは、現在の地方議会に共通する問題だ。
 多様性と自主性を備えた議会へ、改革の歩みを加速してほしい。

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