政務活動費の不適正使用などで、あらためて注目された「議会とカネ」。長年の制度を変えない議会も多いが、朝日新聞の全国自治体議会アンケートからは、透明化への動きが少しずつ広がっていることもわかった。▼1面参照
「コピー代 140円」「切手28枚代金 2240円」――
神奈川県箱根町議会のホームページには14議員の政務活動費の収支報告書と領収書が並ぶ。町議会が1月からネット公開を始めた。きっかけは昨年10月に開いた住民との意見交換会だ。
「何に使っているのか」「領収書はどうやって見られるのか」。議員1人月額1万円の政務活動費への質問が相次ぎ、議会改革担当の折橋尚道町議(56)は「『号泣会見』があり、住民の関心の高さを実感した」。議会は約1カ月後、住民らが情報公開請求の手間をかけなくても済むようネット公開を決めた。
さきがけは北海道函館市議会だ。領収書などは請求があれば公開していたが、政務活動費をめぐる住民からの訴訟も続出。透明性をさらに高めようと2012年にネット公開を始めた。最近は、議員1人月額4万5千円の政務活動費の消化率は5割前後だ。道南市民オンブズマンの大河内憲司代表(79)は「全国から監視されている緊張感を生む」と指摘する。高知県議会は7月からネットで公開予定。大阪府議会も2月議会で同様の条例改正案が可決される見通しだ。
使途の公開だけでなく、第三者がチェックする仕組みを設ける動きも広がる。
「号泣県議」で話題になった兵庫県議会。昨年11月、政務活動費の使途を調査する「第三者機関」を設けた。大学教授、弁護士、公認会計士3人による協議会が、疑義のある支出を調査し、それをもとに議長が是正命令を出す。第三者チェックの仕組みがあるのは、北海道、東京都、さいたま市、大阪市、福岡県、熊本市など21議会ある。
中でもユニークなのが北海道鹿追町だ。公募に応じた住民5人が書面審査だけでなく、町議に直接質問することができる。「視察を町政にどう役立てるかはっきりしない」と注文も飛ぶ。埴渕賢治議長(73)は「町民の目にたえられる議会をめざしたい」と話す。
「一度手にした政務活動費を返したくなかった」。元兵庫県議が警察の調べにこう供述して批判が集中した「前払い」制度の見直しも始まった。秋田県湯沢市議会は4月から、会派の担当議員らが議員の領収書などを審査し、適正な支出分だけを支払う「後払い」に切り替える。由利昌司議長(66)は「使い切りの意識も変わるし、無駄遣いはなくせる」と言い切る。
■定額制の交通費、実費化で1割に
本会議や委員会に出席する際の交通費などの「費用弁償」も見直し対象だ。この4年で80議会が廃止し、費用弁償が「ない」と答えたのは920議会。「ある」の868議会を上回った。1日一律5千円を支給していた京都市議会は「厳しい社会経済状況」などを理由に11年に費用弁償を廃止。1日一律5千円の和歌山市議会も4月に廃止する。
費用弁償には、かかった費用に関係ない一律支給に批判があるが、支給する868議会のうち36%の314議会が一律支給だった。
この中で最も高額な東京都議会は23区と島部の議員に1日当たり1万円、それ以外に1万2千円を払う。島部の議員には船賃、飛行機代は別に支給し、13年度の総額は5224万円だった。1日4千円を支給する港区議会。同区は公共交通機関も多いが、議会事務局は「議員は忙しいのでタクシー利用を想定している」。だが、自転車や徒歩で登庁する議員もいるという。
一方で、実費支給への切り替えも進む。三重県四日市市は「定額支給だと支給根拠が不明確だ」として、11年4月から一律5200円支給していたのを実費に変えた。10年度に総額1455万円だったが、13年度は約10分の1になった。
0 件のコメント:
コメントを投稿