地方議員の成り手不足や高齢化が深刻化している。背景には、議会が住民から遠い存在になり、関心が薄くなっている上、特に小規模自治体は議員報酬が低く、専業では生活が厳しいことがある。事態を打開しようと、報酬を上げて出馬意欲を促したり、住民が政策立案に加わる仕組みを整え、政治への関心を高めたりする所も。4月の統一地方選を前に、地方議会の課題を探った。
◇無投票、倍以上に
総務省のまとめによると、町村議選では、無投票当選の割合が2006年の10.1%から13年は23.4%と倍以上に増加。また、全国町村議会議長会の調べでは、町村議の平均年齢は1999年の59.0歳から14年には62・9歳に上昇した。
北海道町村議長会参与を務める勢※(※=竹かんむりに旗)了三氏は「(そもそも)高齢化で若い人が減っているし、月額十数万円の報酬では30~40代には魅力が少ない」と原因を分析する。
11年に36歳で北海道蘭越町議に当選し、専業で議員活動を行ってきた琵琶博之氏(40)は、貯金を崩しながらの4年間だった。報酬は東京都議が月102万円なのに対し、蘭越町議は月15万9000円。多くの町議は年金や他の事業収入がある。琵琶氏は「本気で活動しようと思ったらそれなりに掛かる。議員だけでは厳しい」と漏らす。
全国町村議長会によると、町村議の平均議員報酬(14年7月1日現在)は月約21万円。新潟県立大の田口一博准教授は「地方創生と言うなら、地方に行けば給料が上がる仕組みにしないと」と主張する。
それでも、議員の支出には住民の厳しい目が注がれ、報酬を増やすのは容易ではない。最も若い議員が50代という岡山県新庄村議会の酒井亨事務局長は「消費税率引き上げなど住民負担が増える話が相次ぐ状況では、難しい」と話す。
報酬を上げにくいのは、議員側にも原因があるとの声もある。勢※参与は「これまで議会の活動を伝える努力をしてこなかった」と指摘する。
◇半数が引退
そんな中、石川県白山市議会は、09年の選挙で定数ちょうどの28人しか立候補せず、全員が無投票で当選したことに危機感を抱き、定数を7人減らす一方、報酬を月43万円から50万円に増額した。13年の選挙では、定数21人に対し27人が出馬。立候補者数は増えなかったが、62歳だった平均年齢は58歳に下がった。
また、長野県飯綱町議会は議員報酬を現在の月16万円から引き上げる準備を進める一方、議会活動への理解を深めてもらおうと、10年から子育て世代の住民らに「政策サポーター」を委託する取り組みを始めた。サポーターは毎月1、2回集まって議員と共に議論し、政策を提言する。意見は重く受け止められ、延長保育料無償化や集落振興基本条例の制定につながった。サポーターには「自分たちの考えが通るなんて」と好評だ。
13年町議選ではサポーターが出馬し当選するなどして、定員割れを回避した。とはいえ、15人の議員の半数程度は今期限りで引退予定で、厳しい状況が続く。寺島渉議長は「これからは議会自身が候補を育てていかないと、ずたずたになる」と危機感を募らせる。
北海道栗山町議会事務局長として全国初の議会基本条例制定に関わった、東京財団の中尾修研究員は「議会はさまざまな世代の住民と意見を交わすことが必要だ」と強調。その上で「仕事をしながらでも議員をできるよう夜間議会を通年実施するなど、抜本的な対策を考える所が出てきてもいい」と提案している。
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