執行部のチェック、政策の立案、民意の吸い上げ-。西日本新聞の議会アンケートによると、こうした地方議会の役割の形骸化は否めない。議員側の問題意識の希薄さや力量不足、住民の低い関心など、さまざまな要因が浮かぶ。
長崎市議会がこの4年間、議員提案で制定した政策条例はゼロだった。統一地方選で実施される九州4県都の市議会ではここだけ。議会事務局によると、「議員から条例づくりの打診すらなかった」という。
40人の議員が受け取る月額報酬は各61万9千円。市議の全国平均の約1・5倍に上り、これとは別に議員1人当たり月15万円の政務活動費も支給される。
今期で引退する源城和雄議長(65)は「何もやっていないわけじゃない。執行部には一般質問で、政策課題などを指摘している」と強調。一方で、お寒い内情も聞こえる。「一部の議員の質問文は、執行部側が作っている」(別の市議)
政策立案、提案の強化…。長崎市議会は2011年施行の議会基本条例で高らかにうたう。だが条例の条文解説によると、議会報告会の開催は「努める」と努力目標にとどまる。
「議会はつまらん」「前と回答が同じじゃないか」。条例づくりのため、源城議長らが他都市の報告会を視察したところ、議員が住民から突き上げを食らっていた。「まともな意見交換ではない。報告会はしたらいかんと思った」と、視察した議員は明かす。
人口減対策や市民の賛否が割れる大型コンベンション施設計画など課題は山積するが、この4年間、議会報告会は一度も開いていない。議員側からは要望すらない。「市民の質問に答えられず、ぶざまな姿をさらすのが嫌な議員もいる」(関係者)という。
「開かれた議会」が思わぬ形で失速したケースも。福岡県新宮町議会は10年度から議会報告会を始め、10カ所で計220人を集めた。翌11年度も同規模だったが、12年度の開催前に区長会から「待った」がかかった。複数の区長が「ほかの行事と重なる」「町長の懇談会と一本化してほしい」。地域の「動員疲れ」が理由だった。
「迷惑を掛けられなかった」と安武研二議長(69)。結局、12年度は開催せず、以降は年1、2回、町のホールで開いただけ。昨年の参加者は22人まで激減した。安武議長は首をひねる。「なぜ関心が低いのか…。理由は分からない」
福岡県南部の中核都市、久留米市。定数38(欠員1)の市議会は今年1月末までに、市長が提案した598議案を一度も否決や修正することなく通した。
「執行部には常々、意見をぶつけている。なれ合っているつもりはない」とある議員。この4年間で条例制定は1本もなく、議会報告会もないが、「政策をつくっても有権者には理解されにくい。お世話になっている団体の声はしっかり聞いている。選挙を考えれば、政策よりも、支援者をこまめに回った方がいい」。
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