2018年11月15日木曜日

議会改革をたどって・・・「政策サイクル」を回す

<朝日新聞より>
 
議会改革に関心を持つ住民は多くない。しょせん運営を改善する内部の話だと思っているからだ。  たしかに議会報告会は民意をくむ仕掛け。質疑を「一問一答」にするのも議論の質を高めるための工夫だ。民意をくみ、議論の質を高めるのはいい。だが、その先が大事なのではないか。  
そんなことを考えている時、東京で開かれたシンポジウムで「議会改革の目的は制度づくりではありません」と話す男に会った。福島県会津若松市議会の議長、目黒章三郎(66)だ。9月中旬、会津若松を訪ねると、目黒は言った。「改革の目的はあくまで市民福祉の向上です。だから10年前から、市民の声をもとに政策を練り上げる『政策サイクル』を回しています」 政策サイクル? 聞くと、起点は30人の全議員が参加して年2回、市内15地区で開く市民との意見交換会だという。毎回、寄せられる200を超す市民の意見を分類・整理し、議会として取り組むべき課題を設定し、委員会に振り分ける。委員会は先進地視察や有識者の意見を聞いて調査・研究を進め、質疑や決議などを通して市に政策提言する。さらに提言が予算などにいかされているかチェックし、市民に報告する流れだ。土台になっているのは、なにを優先し、どんな提言をまとめるのか、それぞれの段階で行う議員同士の徹底した議論だ。だが、最初からこうではなかった。1995年、議員になった目黒は驚いた。議員は執行部に質問するだけで、議員同士の議論が全くなかった。「学級会だって生徒同士がやりとりするのに、議会がこれでいいのか、って。素朴な疑問でした」そんな議会が、議員同士が議論し、政策をつくる場に変わる。きっかけは、07年10月に議会が招いた北海学園大学教授(当時)、神原勝(75)の講演だった。議員はただ質問するだけ。そんな議会は駄目です。議員同士が政策を議論して議会としての意見をまとめ、執行部に対抗しないと行政監視、政策立案という本来の機能は発揮できません――。「まさに目からウロコ。あれから『チーム議会』にカジを切り、政策サイクルにつながりました」その成果はあがっているようだ。猪苗代湖畔にある湊地区は、一部の集落が上水道未整備で渇水になると飲み水にも困っていた。意見交換会で声を上げると、議会は現地調査や先進地視察を重ね、13年に未整備地区の早期解消を求める決議を全会一致で可決した。結果、市は今年度までに全地区で解消させると約束。すでに9割以上の集落で配水が始まっている。「議決が後押ししてくれたおかげです」。湊区区長会会長の小桧山(こびやま)昭一(66)の言葉に、議会への信頼を感じた。「チーム議会」で議論を重ね、政策をつくって成果を出す。改革の「第2ステージ」が始まっている。



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