所沢市の小中学校の教室にエアコン設置の是非を問う住民投票がおこなわれる。市民が直接市政の重要施策の決定に参加すること自体は歓迎すべきだが...
■ 航空自衛隊入間基地自衛隊機による騒音
入間基地に近い所沢市の小中学校29校は、自衛隊機による騒音の影響で「防音校舎」のため、密閉性が高く、夏に窓を閉め切ると授業に集中できないほど暑い。そこで、平成18年、所沢市は国の補助金を使い、防音校舎へのエアコン設置計画を決めた。
■ 新市長が計画撤回
平成23年10月に初当選した藤本市長は、同年に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故を受け、「快適な生活は多くの犠牲の上に成っていることを知るべきだ」と計画を撤回。
■ 住民の直接請求
狭山ケ丘中の保護者が中心になり、平成26年9月、住民投票条例の制定を求める署名活動を開始し、1か月で法定数を大きく上回る8,430人分を集めた。直接請求を受けた藤本市長は「賛成できない」との意見を付けて条例案を提出したが、議会は賛成多数で可決。条例は、賛否のいずれかが有権者の3分の1以上になった場合、投票結果を重く受け止めるよう市長に求めているが、法的な強制力はない。
■ 住民投票は2月15日
藤本市長は「票数によってはそれなりの結論を出さないといけないかもしれない」と住民投票の結果を重く受け止めることを示唆している。
■ 藤本市長の主張(自身のブログ)
クーラーを付けるのは、防音校舎になっている28校。市内には47小中学校あるが、防音校舎でない18校は所詮設置されない。
冷暖房付けるのに総額78億円(市費30億円)かかり、市が30億円使うということはクーラーと引き換えに、30億円分のサービスをやめにするか、借金を増やすか、増税するということ。市としてそういう道は採りたくない。今は、税収は減り、福祉費用が増大し、お金の余裕は全くない。毎年の維持管理費や光熱水費も必要となる。
■ 所沢市の財政状況
所沢市の歳入は918億円(市税収入505億円)。主な歳出は、
人件費 179億円
物件費 162億円
扶助費 250億円
補助費 139億円
公債費 68億円
繰出金 51億円
普通建設事業費 47億円
維持補修費 21億円など。
■ 考察
昨今の暑い夏を考えるとき、子どもたちの教育環境の充実のためには、エアコンの設置は必要だろう。一方で、総額78億円(市費30億円)のエアコン設置費・維持管理費は、所沢市の財政状況を考えると、市財政を圧迫するのは事実。さらに、残された18校への設置に対する市民の要求も高まるであろうことから、さらに財政圧力は高まる。
今回の住民投票を通して、年々増大する高齢福祉、介護、医療、児童、生活保護などの扶助費や老朽化した施設の更新へどのように対応すべきか、また市財政の状況などについて議論が深まるとともに、今後の住民サービスの選択と集中、施設の統廃合についても議論が及ぶことを期待したい。いずれにしても市民一人ひとりが所沢市の将来に対して大きな責任を有することに思いが及ぶきっかけとしたい。
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