2015年10月28日水曜日

マニフェストどうなった・・・朝日新聞より

 
◇「選挙後」検証 取り組み広がる
 選挙の前に候補者が有権者に公約する政策やその工程表を明記した「マニフェスト」。有権者との「約束」だが、当選した後にどの程度実施されたのかはわかりにくい。政策のその後の「見える化」を進めようと、取り組みが少しずつ広がっている。
◇入間で大会 市長、公約を自己採点
 8月中旬、入間市であった「市政検証大会」。田中龍夫市長(63)が2012年の市長選でマニフェストに掲げた政策の進み具合を検証するのが目的で、年1回行われている。入間青年会議所の主催で、100人以上の市民が参加した。
 冒頭で、田中市長自らが当選以降の取り組みについて「1~5点」の自己評価をつけて説明した。「職員数を1割削減する」との公約については、「3点」と評価。「人がいなくて政策ができないということもあった。新事業には手厚く配置しないといけない」と、マニフェストに掲げた項目に変更がありうることに理解を求めた。
 参加者に意見を聞いたり、田中市長の説明に理解できるかどうかを「○」か「×」で示してもらったりするコーナーもあった。
 田中市長は取材に「行政は日々変わり、選挙で約束した以外のことも必要と判断すればしている」とマニフェストのみを重視しているわけではないとの考えを示しつつも、「年に1度、市民の皆さんと進み具合を確認することは、初心を振り返り、約束した政策を立ち止まって見直すのに良い機会」と意義を強調した。
 ある参加者は「実現していない政策も説明が聞けて、徐々に進んでいるのが分かった」。選挙で選ばれた政治家と有権者との相互理解の場にもなっていることがうかがえた。
◇政治不信の払拭狙う
 政策実現に向けて工程表や財源など具体的に示したことで、2000年代に脚光を浴びたマニフェスト。選挙時のみに注目されることが多いが、従来の「抽象的な公約」とは異なり、達成したかどうかを検証できるのも大きな特徴だ。
 「当時マニフェストが好意的に市民に受け入れられたのは、政治への信頼の欠如があったのではないか」。入間市の検証大会でコーディネーターを務めた、埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワークの原口和徳さんは話す。国政では民主党マニフェストを掲げて09年に政権交代を果たしたものの、頓挫したものも多く、マニフェストそのものへの信頼性も揺らぐ。そんな中でも、マニフェストを検証することで政治家との対話が進み、市民の不信感を払拭(ふっしょく)することが期待されるという。
 また、「マニフェストそのものの弱点を補う機会にもなる」と原口さんは言う。「政策を進める中で当初の想定から外れることもある。検証は、生じた変化を政治家が発信し、市民が受け入れるかどうかを検討、表明する機会にもなる」
 第三者がかかわる形での検証の取り組みは、徐々に広がりつつある。県内では、越谷、春日部、久喜、鴻巣、坂戸などで市長が掲げたマニフェストの検証大会が開催されている。このほか、政治家自らが検証を行うケースもある。原口さんは「こうした取り組みが広がることで、『地盤・看板・かばん』といった従来の方法で候補者を選ぶのではなく、政策本位で選択する政治が広がってほしい」と期待する。

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