「夜間休日議会」を本格的に導入した長野県喬木村議会。改革を主導する下岡幸文議長(62)に、夜間休日議会の狙いや、めざす姿について聞いた。
――狙いは何ですか。
「これからの議会は、村政のチェックに加え、将来に向けたいろいろな提案や提言をしていかなくてはいけない。そのためにはリタイアした男性ばかりではなく、多様な人材が必要だ。男性も女性も、勤めている人、子育て中の人など幅広い人に議員になってもらいたい」
「仕事を持っている若い世代の皆さんが議員になりやすい環境をつくる。これからの議会を考えて、幅広い人材を集めるための一つの方策が、平日の昼間の代わりに夜や休日に議会活動をする『夜間休日議会』だったということです」
――地方議員のなり手不足を解消しようと、議員報酬をアップする議会もあります。
「喬木村議会の場合、議員報酬は14万円。いまの村の財政から考えれば、専業でやるだけの議員報酬は払えない。1万円増やして15万円にしたところで、家族を養って暮らしていけない。だからうちは兼業でいくと決めました。兼業を前提にした議会活動はどうしたらできるのかを追求して、『喬木モデル』をつくりたい」
――6月の改選で、40代や50代前半で仕事を持っている議員が誕生しました。
「夜間休日議会に踏み切った直接のきっかけは、若い議員が出てきてくれたことです。彼らが自分の仕事ができなくなって、1期でもうやめさせてくれとなってしまったら、非常に悲しい。若い皆さんにとにかく育ってもらって、この次の議会なり、村なりを背負ってもらいたい」
「彼らは若い人の意見を聞いてきます。若い人は柔軟で、私たちに思いもつかない発想をする。昔は、若い議員の言うことは、上から押さえつけてそんなことできっこないとか、もっと勉強してから言いなさいとかありましたが、私たちはそれを言いたくない。もうそんな時代じゃないんです」
――女性を含め、多様な人材にどう出てきてもらいますか。
「ただ単に、夜間にやればなり手が出てくるわけではない。議員の仕事というのをみんなに見てもらって、思いを持っている人に出てきてもらいたい。また、なぜ女性が出てこられないか。現状では、女性が地区からの推薦で出てくるということがありえないんですよ。だから地縁血縁の選挙を壊さないといけないと思っている。1人が2票を投票するような『連記制』にしたらどうかと総務省に提言しました。それなら1票は地区代表に入れたとしても、もう1票はこれからの村のために必要な人へ投票できる」
――全国初の取り組みということで注目が集まっています。
「反応が大きすぎて、そっちの方がびっくりした。なぜこんなことが記事になって、みんなそんなに関心をもつのかと。全国で初めてだと総務省に聞きましたが、どうして誰もやっていなかったのか不思議でしょうがないくらいです」
「喬木村議会でも、選挙が無投票になって議会改革を議論した8年前から出ていた話。ただ『できっこない』と言われてきました。村職員の対応をどうするんだとか、できない理由を探すんです。『自分がやりたくない』とは言わずにね」
「実際にやってみて結果を見ないと、本当にできるのかなんて、わからんでしょう? できない理由を考えるのではなくて、どうやったらできるかについて考えるのが、本当の組織だと思います」(聞き手・岡林佐和)
◇
しもおか・ゆきふみ 農協職員を経て、2013年に喬木村議会に初当選し、現在2期目。6月から議長を務める。
http://digital.asahi.com/articles/ASKD64K4GKD6UOOB00R.html?rm=501
0 件のコメント:
コメントを投稿