武蔵野市議会に松下市長の退職金を3分の1に削減する条例案が市長ではなく議員から提出された。あまりにも、非常識、としか思えない。
■なぜ議員が提出か?
市長の退職金削減条例を提出したのは、会派「むさしの志民会議」の深田貴美子議員、竹内まさおり議員、下田ひろき議員の3名。
まず、なぜ市長の退職金を議員が提出するのか? 本来は、市長自ら提出するべきものだろう。
提案理由では、市長選の公約にあったからと説明していたが、松下市長は『市長退12年前の邑上前市長の取組を参考に、来年秋に予定されている特別職報酬審議会に諮問した上で、条例改正案を提出する考えです』とツイッターなどで説明している。市長自ら提出するとしているのに議員が提出する必要はない。
まして松下市長は、今年の10月に当選したばかりだ。退職金を受け取るのは4年後。その前に条例を定めれば十分間に合う。
■決議を無視
市長退職金を3分の1にするのは、邑上前市長も公約として掲げ、1期目の就任直後、2005年12月の平成17年第4回定例回に市長退職金削減条例を提出している。しかし、継続して議会は審議を行い、翌年の2006年9月の平成18年第3回定例会で可決した。
この審議のなかで、議会は、『武蔵野市特別職の職員の給与及び旅費に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例の施行に当たっては、他の特別職との整合を図るため、特別職報酬等審議会に諮問すること』との付帯決議を付け、全会一致で可決している。
つまり、議会は市長退職金を削減する場合には特別職報酬等審議会に諮問してから提出するように決めたのだ。
邑上前市長は、この決議の後、2期目、3期目とも特別職報酬等審議会に諮問してから市長退職金の削減条例を提出している。松下市長も「特別職報酬審議会に諮問した上で提出」としており、決議を尊重しようとしている。
次回の特別職報酬審議会は来年が予定されており、今回の条例案は、この決議を無視していることになる。
議案上程のさいの本会議では、この条例を知っていたのかの他の議員からの質問に対して、知っていたと答弁していたとしていたので、決議無視は確信犯だったことが分かる。
決議には法的拘束力はないが、議会として決めたことを市長が守っているのにたいして、議員が守るつもりがないとなれば議員としての資質が疑われても致し方がない。
また、武蔵野市特別職報酬等審議会条例第1条には、「市議会議員や市長及び副市長の給料(「議員報酬等」)の額等について審議するため、武蔵野市特別職報酬等審議会を置く」とあり。第2条で、市長は、議員報酬等の額に関する条例を議会に提出しようとするときは、あらかじめ、当該議員報酬等の額について審議会の意見を聴くものとする」としている。
この条文は、市長や市議会議員の報酬などについて額を決めるさいには、第三者機関である報酬審議会の意見を聞くことを義務付けているとも言える内容だ。いわば、条例に反しているとも考えられる。このことについては、特別職報酬等審議会には疑問を持っていると答弁していた。
結局、聞く耳持たず、との印象しか持ちえなかった。
■他人には厳しく自らは?
「むさしの志民会議」は、今年の6月の 平成29年第2回定例会で武蔵野市議会議員の期末手当に関する条例に対する修正案を提出したさいに、多すぎるというのであれば、自らの期末手当について、供託すべきではないかとの質問があった。
供託とは、実質的な受け取り拒否のことだが、市には支払う義務があるため市に対して受け取り拒否ができない。そのため、議員が国(法務局)に預けておくというものだ。市内の団体への寄付は公選法でできないこともあり、この手法を使う議員は少なくはなく、よく知られている手法だ。市議選に立候補するさいには、供託するので知らないはずはない(一定の票を取らないと没収=国庫に入る)。
竹内議員は『供託のことも検討しております』、深田議員は『供託についてはそれはもう当然ではないですか。反対だけして受け取っているというのは話が違いますから。私としては別に供託することは全く異存ございません』、下田議員は『会派でその辺は検討していきたいなと思います。もし供託が必要でしたら全然私はしたいなとは思っています』とそれぞれ答弁している(武蔵野市議会議事録より)。
そのため、市長の退職金を削減しろというなら自らの削減(=供託)はどうしたのかとの質問もあった。だが、寄付をしている。あるいは、供託先の団体が決まっていないとの答弁で供託をしたとの明確な答弁はなかった。供託しているのなら、していると言えばいいだけのことだが…
ちなみに供託できるのは、法務局だけなので団体は選べない。
■なぜ提出?
常軌を逸しているとしか思えないが、なぜ、この条例案を提出したのだろうか?
提案理由では、公約だからとしていた。
市長公約を議員が提出するというのなら、18歳までの医療費無料化などほかの松下市長の公約は提出しないのか? となってしまう。
たんなる市長への嫌がらせか? それとも、条例を提出したと宣伝するためのパーマンスなのか?
本音は分からないが、この会派以外に賛同する意見はまったく聞こえないのが現状だ。
条例案の委員会での審議は、2018年2月1日の総務委員会が予定されている。
上記の質問や答弁は、上程時の大綱質疑のため質問時間が5分、回数は2回目で決めている本会議であったため詳細にはできていない。委員会では質問時間の制限がないため、より詳細な審議が期待される。
■議員や議会のありかた
地方自治法第112条2で「議員の定数の十二分の一以上の者の賛成」があれば条例は提出できると定められている。武蔵野市議会の場合は26名が定員のため3名以上であれば条例案は提出可能で内容は問わず審議することになる。
議員が条例提出権を活用し政策を実現していくことは基本的には良いことだ。議会改革を進めている議会では条例提案を活用しているからだ。そのさい、時間をかけ熟議を重ねていく。
ところが、今回は条例案は事前の説明はなく、本会議での提案説明はあまりにもひどすぎるものだった。議会として政策を考える、制度を活用するとは逆のベクトルで、これでは議員の権限乱用と言われても仕方がないだろう。条例は提出することだけが目的ではない。市民福祉向上のためつくるものであって多くの議員が賛同できるように内容は煮詰めるものだ。
自分が信じたことだけが正しいとしか考えないのであれば、議事機関としての議会の否定にもつながる。議員や議会のありかたに一石を投じる提案となるかもしれない。
市長の退職金削減条例を提出したのは、会派「むさしの志民会議」の深田貴美子議員、竹内まさおり議員、下田ひろき議員の3名。
まず、なぜ市長の退職金を議員が提出するのか? 本来は、市長自ら提出するべきものだろう。
提案理由では、市長選の公約にあったからと説明していたが、松下市長は『市長退12年前の邑上前市長の取組を参考に、来年秋に予定されている特別職報酬審議会に諮問した上で、条例改正案を提出する考えです』とツイッターなどで説明している。市長自ら提出するとしているのに議員が提出する必要はない。
まして松下市長は、今年の10月に当選したばかりだ。退職金を受け取るのは4年後。その前に条例を定めれば十分間に合う。
■決議を無視
市長退職金を3分の1にするのは、邑上前市長も公約として掲げ、1期目の就任直後、2005年12月の平成17年第4回定例回に市長退職金削減条例を提出している。しかし、継続して議会は審議を行い、翌年の2006年9月の平成18年第3回定例会で可決した。
この審議のなかで、議会は、『武蔵野市特別職の職員の給与及び旅費に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例の施行に当たっては、他の特別職との整合を図るため、特別職報酬等審議会に諮問すること』との付帯決議を付け、全会一致で可決している。
つまり、議会は市長退職金を削減する場合には特別職報酬等審議会に諮問してから提出するように決めたのだ。
邑上前市長は、この決議の後、2期目、3期目とも特別職報酬等審議会に諮問してから市長退職金の削減条例を提出している。松下市長も「特別職報酬審議会に諮問した上で提出」としており、決議を尊重しようとしている。
次回の特別職報酬審議会は来年が予定されており、今回の条例案は、この決議を無視していることになる。
議案上程のさいの本会議では、この条例を知っていたのかの他の議員からの質問に対して、知っていたと答弁していたとしていたので、決議無視は確信犯だったことが分かる。
決議には法的拘束力はないが、議会として決めたことを市長が守っているのにたいして、議員が守るつもりがないとなれば議員としての資質が疑われても致し方がない。
また、武蔵野市特別職報酬等審議会条例第1条には、「市議会議員や市長及び副市長の給料(「議員報酬等」)の額等について審議するため、武蔵野市特別職報酬等審議会を置く」とあり。第2条で、市長は、議員報酬等の額に関する条例を議会に提出しようとするときは、あらかじめ、当該議員報酬等の額について審議会の意見を聴くものとする」としている。
この条文は、市長や市議会議員の報酬などについて額を決めるさいには、第三者機関である報酬審議会の意見を聞くことを義務付けているとも言える内容だ。いわば、条例に反しているとも考えられる。このことについては、特別職報酬等審議会には疑問を持っていると答弁していた。
結局、聞く耳持たず、との印象しか持ちえなかった。
■他人には厳しく自らは?
「むさしの志民会議」は、今年の6月の 平成29年第2回定例会で武蔵野市議会議員の期末手当に関する条例に対する修正案を提出したさいに、多すぎるというのであれば、自らの期末手当について、供託すべきではないかとの質問があった。
供託とは、実質的な受け取り拒否のことだが、市には支払う義務があるため市に対して受け取り拒否ができない。そのため、議員が国(法務局)に預けておくというものだ。市内の団体への寄付は公選法でできないこともあり、この手法を使う議員は少なくはなく、よく知られている手法だ。市議選に立候補するさいには、供託するので知らないはずはない(一定の票を取らないと没収=国庫に入る)。
竹内議員は『供託のことも検討しております』、深田議員は『供託についてはそれはもう当然ではないですか。反対だけして受け取っているというのは話が違いますから。私としては別に供託することは全く異存ございません』、下田議員は『会派でその辺は検討していきたいなと思います。もし供託が必要でしたら全然私はしたいなとは思っています』とそれぞれ答弁している(武蔵野市議会議事録より)。
そのため、市長の退職金を削減しろというなら自らの削減(=供託)はどうしたのかとの質問もあった。だが、寄付をしている。あるいは、供託先の団体が決まっていないとの答弁で供託をしたとの明確な答弁はなかった。供託しているのなら、していると言えばいいだけのことだが…
ちなみに供託できるのは、法務局だけなので団体は選べない。
■なぜ提出?
常軌を逸しているとしか思えないが、なぜ、この条例案を提出したのだろうか?
提案理由では、公約だからとしていた。
市長公約を議員が提出するというのなら、18歳までの医療費無料化などほかの松下市長の公約は提出しないのか? となってしまう。
たんなる市長への嫌がらせか? それとも、条例を提出したと宣伝するためのパーマンスなのか?
本音は分からないが、この会派以外に賛同する意見はまったく聞こえないのが現状だ。
条例案の委員会での審議は、2018年2月1日の総務委員会が予定されている。
上記の質問や答弁は、上程時の大綱質疑のため質問時間が5分、回数は2回目で決めている本会議であったため詳細にはできていない。委員会では質問時間の制限がないため、より詳細な審議が期待される。
■議員や議会のありかた
地方自治法第112条2で「議員の定数の十二分の一以上の者の賛成」があれば条例は提出できると定められている。武蔵野市議会の場合は26名が定員のため3名以上であれば条例案は提出可能で内容は問わず審議することになる。
議員が条例提出権を活用し政策を実現していくことは基本的には良いことだ。議会改革を進めている議会では条例提案を活用しているからだ。そのさい、時間をかけ熟議を重ねていく。
ところが、今回は条例案は事前の説明はなく、本会議での提案説明はあまりにもひどすぎるものだった。議会として政策を考える、制度を活用するとは逆のベクトルで、これでは議員の権限乱用と言われても仕方がないだろう。条例は提出することだけが目的ではない。市民福祉向上のためつくるものであって多くの議員が賛同できるように内容は煮詰めるものだ。
自分が信じたことだけが正しいとしか考えないのであれば、議事機関としての議会の否定にもつながる。議員や議会のありかたに一石を投じる提案となるかもしれない。
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