兵庫県と県内41市町の計42議会で2017年度、市長ら首長の提出した条例や予算などの議案が否決されたケースは6議会の8件にとどまることが神戸新聞社の調べで分かった。議案の修正を含めても11議会の16件のみで、首長提案の総数5524件のうち99・7%は原案通り可決された。県議会では60年間にわたり否決、修正ともゼロが続き、議案をそのまま通す「追認機関」と批判される一端が浮き彫りとなった。
地方議会は「二元代表制」の一翼として、議案の審議や議決を通じて首長を監視する役割を担う。「提案される前に水面下でチェックをしている」との主張がある一方、相互依存の関係を維持するため議場での議論が形骸化しているとの指摘もある。
各議会事務局によると、17年度中に首長提出の議案を否決したのは芦屋、宝塚、三木、丹波市と播磨、太子町の6市町議会。宝塚市は太陽光パネルの設置を促すため、発電施設の固定資産税免除の期間を延ばす改正条例案を出したが、議会は「従来制度の効果が検証されていない」と否決した。
三木市議会は敬老祝い金を減額する条例改正案を否決し、補正予算案の一部を修正。播磨町議会は税などの滞納金を督促、強制執行する手続きを明文化した条例案など2件を否決、太子町議会は副町長人事など人事案2件を不同意とした。
修正は三木市議会に加え、伊丹、豊岡、川西、朝来市と上郡町の6市町議会であり、補正予算案や条例内容の一部見直しが目立った。
一方、県議会は1959年以降、県当局が提出した議案の追認を続けており、議場で双方の緊張関係が具現化した例はない。
全国都道府県議会議長会によると、47都道府県で17年に知事から提出された議案は計7825件。このうち原案通り可決、承認などされたのは99・5%に当たる7784件だった。否決はゼロで修正可決は7件。全議会の8割近い37議会が100%の可決率だった。
有識者らでつくる「自治体議会改革フォーラム」(東京)の調査(全地方議会の83%に当たる1485議会が回答)では、16年に首長提出された議案を1件でも否決した議会は138議会で9・3%だった。(井関 徹、前川茂之、若林幹夫)
■審議過程オープンに
【同志社大大学院の新川達郎教授(地方自治)の話】地方議会で首長提出の議案が修正、否決される事例は毎年数%程度しかないが、議会がきちんと精査して議決したかが重要だ。議会が提案前に行政当局と意見交換し、内容が良くなれば役割を果たしたことになる。ただ、そうした審議過程はオープンにすべきで、当局の説明内容などを記録に残し、後に公開すれば透明性の確保や有権者の理解につながる。
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