◇反発 留任するケースも
県議会と県内19市町議会のうち、15議会が議長・副議長の任期を原則1年としていることが読売新聞の調査でわかった。法律上は4年と定められており、全国の状況と比較しても、「短期交代」の状況が顕著となっている。その反面、任期を超えて「居座り」留任をするケースも相次いでいる。(まとめ・布施勇如)
◇たらい回し
議長・副議長の任期は、議員の任期と同じ4年と、地方自治法で規定されている。しかし実際には、申し合わせや慣例により、1年または2年で辞職し、交代する議会が多い。
全国市議会議長会の調査(2013年12月現在)によると、申し合わせなどで任期を1年とする市は全体の27・8%、2年が49・5%、「任期4年、申し合わせ・慣例なし」は17・2%。
一方、全国町村議会議長会の調査(14年7月現在)では、町村の55・7%が法定通り4年、2年は35・1%、1年は6・6%となっている。
読売新聞が今月6~8日、県内の各議会事務局などに取材した結果、県議会と14市町議会が任期1年、4市町議会は2年で、「再任を妨げない」とする議会もあった。このほか、甲良町議会は2012年の町議選以降、それまで1年または2年としていた申し合わせがなくなり、現職は12年2月から続けている。
また、申し合わせがある市町のうち、甲賀市議会は11年11月から、2年だった任期を1年に短縮。愛荘町議会も2年が通例だったが、14年3月、1年とすることを内部で明文化した。いずれも「多くの議員が議長になれるように」というのが理由だという。
ある議員は「やはり一度は議長を経験したい。一議員とは、経歴も権威も違ってくるから」と語る。議長や副議長になれば報酬も一般議員より上がる。
◇「居座り」
8日、多賀町議会で開かれた臨時議会。土田一善町議(77)の議長辞職願が許可された。同町議会では、議長の任期は申し合わせで2年。しかし、12年4月に就任した前任者が13年8月、任期途中で議長を辞職した。後を引き継いだ土田町議の任期は、14年3月までとされたが、辞職に応じず、同4月に議長不信任決議案が可決された。
背景には議会内の勢力争いがあった。土田町議は「闇討ちのように不信任案を出され、就任1年までは続けようと思った。しかし、新年度予算を審議する3月議会の前に代わった方がいいと考え直した」と話す。
議長の任期が慣例で1年となっている彦根市議会でも14年5月、谷口典隆議長(47)が留任した。所属していた会派から除名され、議会内でも「居座るのか」と反発があったが、「議会改革が道半ばなので、引き続きやらせてもらうことにした。市長と議会は対峙(たいじ)すべきで、市長の任期が4年なのに、議長が1年で代わっていいのかという思いもあった」と話す。
県議会でも、12年に就任した山田和広副議長(66)が、1年交代の慣例と異なり、2回続けて留任している。
◇権威と資質
議長が毎年のように交代することについては、賛否両論がある。
約80市が加盟する「都市行政問題研究会」は、06年の調査研究報告書で「議会の権威を高めるためにも4年間在任すべきである」と提言した。全国町村議会議長会の「地方(町村)議会活性化研究会」も05年、首長に対等以上に対応できる権威が必要として、「法定どおり4年が望ましい」と指摘している。
任期を1年とする大津市議会で、議長を経験した市議は「やっと仕事がわかったというところで終わる」と、申し合わせによる期間限定に疑問を呈する。
岐阜県議会事務局で勤務した経験を持つ横山幸司・滋賀大准教授(地方自治論)は「1年では短すぎ、4年では長い。2年が望ましい」と考えている。「地方議会では、事前の根回しや会派の勢力で議長が選ばれることが多く、資質に欠ける議長が長期間務めると、正当な議会運営が難しくなる」というのが主な論拠だ。
一方で、議長選出の手順に関し、「議会改革の一環として、立候補者が公開の場で所信表明をした上で選ぶという試みがあってもいい」と指摘する。
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