【信じられる候補者がいないならば いっそあなた自身が出馬してみたら?】
そうは言っても、現実はきわめてお寒い状態だ。今年は多くの地域で議員選が予定されているが、本来の議員の役割を果たせそうな候補者がどうにも出そうにないと落胆している方も多いのでないか。そうした場合は前回(連載第123回)でも述べたように、「この人ならば」という人を探し出し、出馬を説得してみたらいかがだろうか。それもダメとなったら、ご自分が覚悟を決めて出るということも選択肢に入れてみたらどうか。
しかし、その場合は一点だけ留意しなければならないことがある。議員になるには相当の準備(勉強と心構え)が必要だということだ。なぜなら選挙で当選するよりも役割をきちんと果たせる議員になることのほうが、数倍も難しいからだ。こんな笑えぬ実例がある。
住民の議会・議員不信が議会リコールにまでつながったのが、名古屋市だった。高額な議員報酬(当時、年間1600万円)の半減を主張する河村たかし市長が主導したもので、特権の上に胡坐をかく議員たちに対して庶民の怒りが爆発した。議会リコールは成立し、市議は全員失職となった。
2011年3月に出直し市議選となり、地域政党「減税日本」を旗揚げした河村市長は、一般公募で候補者をかき集めた。リコール署名活動の余勢もあって28人が当選し、このうち27人が全くの新人だった。減税日本は市議会内に「減税日本ナゴヤ」という会派を結成し、市会(定数は75)の最大会派に躍り出た。市民の多くが「庶民革命が成功した」と快哉を叫んだ。
しかし、その喜びは長くは続かなかった。新人議員のほとんどが準備不足のまま立候補し、河村人気に乗って票を集めた人たちだった。議員としての資質や覚悟、心構えや知識、能力などを鍛え上げた上での出馬ではなかった。その上、新人議員をみっちり指導する体制もなかった。
新人たちの多くは、議員になってみたものの右も左もわからぬまま、右往左往することになってしまった。一方、リコールされて臨んだ逆風の選挙を勝ち抜いた現職議員らは、手ぐすねを引いていた。自分たちを徹底批判した新人議員たちを攻撃の的にしたのは、言うまでもない。準備不足のまま議場に入った新人議員らは、初めて体験する議会で集中攻撃に晒され、すっかり萎縮してしまったのである。
議員報酬の半減はなんとか実現したが、その後はさっぱりとなってしまった。それどころか、減税日本ナゴヤの議員の不祥事が立て続けに発覚し、多くの市民を愕然とさせる事態となった。政務活動費の不適切な使用や領収書の偽造、当て逃げや薬事法違反、さらには議会リコールで集めた署名を選挙活動に流用していた者もいた。自分たちが「今の議員はけしからん!」と批判してリコールした議員と同じか、それ以下のことをしでかしたのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿