【チェック機能だけでは不十分 二元代表制における地方議員の意味】
地方自治の世界は国と異なり、首長と議会がそれぞれ住民によって選ばれる二元代表制となっている(二元代表制が採用された理由や意味、そして、それが日本社会にとって最適な仕組みなのかについての議論はさておく)。二元代表制の下での地方議会の役割は、執行機関を監視することだと言われている。行政のチェックである。
しかし、チェック機能だけが議会の役割ならば、これほどたくさんの議員は不要と考える(実際は、チェック機能も果たせない追認議会がほとんどだが)。多人数で、しかも住民と接する機会(時間と余裕)のある議会側は、民意を幅広く集め、政策立案につなげていく使命もあるはずだ。
執行機関サイド(自治体職員)とは違った発想での政策を、議会として作成するもう1つの役割である。政策立案の複線化の一翼を議会として担うものだ。それにはこんな意味がある。
今の自治体の政策立案は執行部のみとなっている。しかし、実際は各自治体がそれぞれ独自に立案しているというよりも、中央官庁などが作成するメニューに依存している傾向が強い。多様な住民二―ズを丁寧に汲み取って地域の実情に合った施策を創り上げるのではなく、中央官庁などが作成した出来合いのメ二ューをそのまま採用しているのである。国が提示するメニューには交付金や補助金、交付税措置といった財源手当ても添付されているからだ。こうして中央官庁の官主導による政策立案が全国共通のことになっている。
全国の自治体はいままでこの流れに沿って行政運営してきたので、執行部の面々(ほとんどの首長を含む)は住民サイドに立った政策立案に不慣れで、かつ不得手となっている。というより、自治体職員はそうした発想や責務を持ち得ずにきたのである。それで住民二ーズとずれた施策が各地で同じ様に実施され、限られた財源が同じ様に有効活用されずにきているのである。
いつまでも中央官庁などに政策立案を丸投げし続けていてはいけない。自治体職員自らが企画立案すべきなのだが、それだけでは不十分だ。中央官庁や自治体執行部発とは違ったもう1つの政策立案をする必要があり、その担い手は今の仕組みでは議会しか見当たらない。
もちろん、今の議会や議員たちにその能力や意識、気概などを持った人はほとんどいないが、中央官庁主導の官治政治の流れを変えるには、議会・議員に本来の役割を果たしてもらわねばならない。議会が政策立案で執行部側と切磋琢磨することが理想であり、行政への監視機能だけでは不十分だ。
では、こうした機能を果たすために求められる議員の資質とは何か。議員個々が見識や自分の意見、政策、理念を持っていることを大前提とし、多様な意見に耳を傾けられ、冷静に話し合える器を持っていることが不可欠となる。コミュ二ケーション能力である。
つまり、異なる意見の持ち主ともきちんと議論ができる人でなければならない。「自分の支持者の意見だけが民意」と考えるような人はNGだ。また、議会はたくさんの職員を抱える行政と対峙しなければならないので、職員ときちんと渡り合える得意分野を持った議員が望ましい。
地域は多様な人たちで成り立っている。議会も多種多様の経歴を持つ老若男女で構成されるべきと考える。多様な議員が侃侃諤諤の議論を重ねながら、最終的に議会としての意見をまとめ上げる。それができるような資質をもったメンバーを、議員に選び抜かねばいけない。議員定数や報酬の削減は、別次元の話である。
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