2018年9月10日月曜日

背景に「お任せ民主主義」地方選で増える無投票

<読売オンラインより>

 山形県内で無投票となる自治体の首長選や議員選がこの10年で1割以上増えていることが、読売新聞の調査で分かった。直近4年間で無投票となったのは全体の約3分の1、首長選に限ると半数近くに上る。来春には統一地方選が予定される中、有識者は「候補者や住民にとって4年に1度の議論の機会がないのは問題。自治体の衰退にもつながりかねない」としている。
 読売新聞が2014年9月~今年8月の直近4年間と、その10年前の04年9月~08年8月の4年間の首長選(知事選、市町村長選)、議員選(県議選、市町村議選=補欠選挙を含む)を分析した。
 10年前(04年9月~08年8月)は、91の選挙のうち23(首長選15、議員選8)で無投票となり、全体に占める無投票の割合は25・3%だった。
 一方、直近(14年9月~今年8月)は82の選挙中30(首長選17、議員選13)が無投票。無投票の割合は36・6%で、10年間で11・3ポイント増加したことになる。
 ◆知事選、異例の2回連続
 無投票の割合を選挙の種類別にみると、首長選は37・5%から47・2%と10年で9・7ポイント増加。議員選は15・7%から28・3%と12・6ポイント増えた。
 首長では、昨年1月に告示された知事選で、吉村知事が無投票で3選を果たした。無投票は前回13年に続いて2回連続。都道府県選挙管理委員会連合会によると、知事選の連続無投票は、1978、82年の滋賀県、2011、15年の高知県に次いで3例目と、極めて異例だ。
 旧民進(現国民民主)、共産、社民各党が吉村氏支援の方針を示したのに対し、自民党が対立候補の擁立を模索しながら、党内の意見が一致せず、擁立を断念したことが要因。県民が選挙戦を通じ、県の「かじ取り役」の県政運営を検証する機会が2回連続で失われた格好だ。
 ◆16市町村長選、無投票
 また、35市町村長のうち、直近の選挙が無投票だったのは半数近い16市町村長に上る。
 今月19日に告示された東根市長選では、現職の土田正剛氏以外に届け出はなく、土田氏の6期連続無投票当選が決まった。県選管によると、県内の首長の連続無投票の回数では最多。同市長選が無投票となるのは7回連続だ。
 市政を託す人を選ぶ市長選で無投票当選が続いていることについて、市民からは「現在の市長は様々な施策を実現しており、不満を持っている市民が少ないのではないか」との声がある一方、「四半世紀近くにわたって民意を問う機会がない状態は、市民にとって良くない」との声もある。
 東根市以外にも連続無投票当選している現職の市町村長は9人いる。3回連続が朝日町、高畠町の2町長、2回連続が上山市、寒河江市、天童市、金山町、最上町、飯豊町、大蔵村の7市町村長となっている。
 ◆議員選、初の定数割れ
 無投票当選の割合は首長選の方が高いものの、ここ10年の増加率は議員選の方が大きい。
 10年前は、補欠選を除いて無投票となった議員選はなかったが、直近は19・4%の議員選(36選挙中7)で無投票となったことが影響した。
 今年6月に告示された庄内町議選では、定数16に対し、15人が立候補を届け、定数割れで全員の無投票当選が決まった。県選管によると、県内の議員選(補欠選除く)で定数割れとなるのは、記録を確認した平成以降で初めて。町選管委員長は「多くの立候補者で活発な議論をしたうえで、ふさわしい議員を吟味するのが健全な選挙。無投票は町政にとっても残念」と話した。
     ◇
 山形大の北川忠明教授(政治学)は無投票当選が増えている状況について、人口減少による成り手不足のほか、人口が多い自治体では、住民が政治に関わることに消極的な「お任せ民主主義」が背景にあると指摘する。
 北川教授は「選挙は候補者や住民が意見を交わし、行政をチェックする大事な機会。無投票が続けば首長にも議会にも緊張感がなくなり、自治体の衰退につながりかねない」としている。(依田和彩)

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