東京都千代田区が区議1人当たり月15万円の政務活動費のうち10万円を報酬に組み込むことを検討している問題で、石川雅己区長の諮問を受けた区の審議会が24日、使途報告を義務付ける政務活動費制度を廃止すべきだとして組み込みを認める答申を出した。政務活動費を縛りのない報酬に振り替えるのは全国でもきわめて異例で、「改革の流れに逆行するお手盛り」との批判が高まっている。【青島顕】
石川区長は答申を受けて来春にも条例案を出し、実施を目指す。
答申を出したのは同区の「特別職報酬等審議会」(会長=武藤博己・法政大教授)。答申は、区議の勤務実態から報酬は区の部長職給与の9割が妥当と判定。現時点は8割程度で月約10万円の増額が必要とした。この増額分を月15万円の政務活動費から振り替えるとしている。
同区は政務活動費について使い道を定め、領収書添付の報告を義務づけている。これに対し、答申は「使途をどれだけつまびらかにしても議員の貢献を評価するにはかなり無理がある」と批判。「制度そのものを廃止し、自分の報酬の中から自らの責任で支出する時代へと向かっている」と主張している。
答申後、武藤会長は「(政務活動費の報告で)領収書を出しても議員活動が透明化するわけではない。議員報酬を高め、議員の社会的地位を高める」と狙いを説明した。石川区長は「答申の中身を検討し対応する」と述べた。
千代田区議の月額報酬は現在、東京23区中4番目に高く、振り替えが実施されると71万8000円となり、トップの江戸川区(62万1000円)を大幅に上回る。
議長「審議応じない」
千代田区の「政務活動費の報酬振り替え」問題が、高まる批判の中、実施に向けて手続きを一つ越えた。ところが、振り替えてもらう側の区議会では批判を恐れてか、実施に否定的な声が強まっており、実現するか流動的になってきた。
区議会は24日、戸張孝次郎議長(自民)名でこんなコメントを出した。「千代田区議会は、答申には一切かかわっておりません」
取材に応じた戸張氏は「議会もかかわっていると思われ、いい迷惑だ。区長の相談には乗らない」と話し、答申通りの条例案が出された場合、審議に応じないとした。一部議員の答申への関与の有無を問うと、「そこは分からない」と答えた。
区議会のコメントは「(政務活動費の)透明性の確保に逆行するものだ。報酬は仕事への対価。政務活動費は調査活動のための必要経費で全く性格を異にする」などと答申を否定し、「到底受け入れることはできない」と結んでいる。戸張氏は「内容は全会派に相談した」と述べた。
最大会派・自民の嶋崎秀彦幹事長(前議長)も、「議長コメントと全く一緒」と強調。無所属の小枝すみ子氏は「答申は飲み食いが議員活動の重要部分だと勘違いしている。これから試されるのは私たちだ」と話す。
千代田区議の政務活動費を巡って、不適正支出の返還請求訴訟を起こしている区民の男性(70)は「答申に10万円を報酬にする根拠が示されていない。単なる数字合わせで言葉もない」とあきれていた。【青島顕】
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審議会の答申骨子
・区議報酬は、区の部長職を100とした時に90が妥当。現状は80程度なので増額する。
・報酬を大幅に増やす一方で、政務活動費を大胆に削減する。
・政務活動費を廃止し、報酬から自らの責任で支出していく時代へと向かっている。
・政務活動費の支出状況によっては5万円が妥当かの検討も必要。
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