2015年8月10日月曜日

省時間ビジネスとしての地方議員事業~職業としての「口利き」

<川崎市民のブログより>

地方議員の仕事とは何だろうか。それは先ず対価を考える必要がある。所属する自治体から給与を支給されるわけでが、言うまでもなく、それは選挙で当選するからだ。では、住民からの得票と取引する中味は何か。一番広く言えば、住民への福祉施策になるが、非常に狭く言えば「口利き」になる。国会議員も似たようなものだと云われれば、そうかもしれない。

そこで口利きとはどんな仕事かと考えれば、多くの場合、口利きと云えば裏社会を想定するだろう。しかし、所謂、黒幕なり、フィクサーは社会的必要性があるからこそ存在できる。即ち、電話一本で問題を解決し、見通しの利かない状況を晴らしてくれるからだ。それは「省時間ビジネス」との言葉で表現できる。
(永井陽之助『他人の経験―省時間ビジネス』(「時間の政治学」所収1979))

ここでは、例えば、住民個人の「自分の子どもを保育園に入れて欲しい」との注文から、「費用が安いので認可保育園に入れたい」、「兄弟を同じ保育園に入れたい」、更に多くの住民の要求になるであろう、「保育園を増やして欲しい」、「空き地があるから、そこに保育園を建てて欲しい」との政策提案に至るまでの依頼に対する対応を広い意味での<口利き>と称すれば、地方議員の仕事は省時間ビジネスに収まってくる。

現代社会では情報の拡散は広く、また、早い。一方、競争は激しく、時間は短縮し、即決が求められる。行政的決定はその機構の中での計画、調整、審議などを経て行われるから時間が掛かるし、その内部はブラックスボックスであり、透明感に乏しい。従って、省時間ビジネスは益々求められ、その重要性は消えることはないであろう。比較的容易に解決できる問題に関しては、住民からの通報を受けた地方議員が、携帯一本で行政に連絡する形は依然、健在である。

一方、組織活動における透明性も求められる。従って、政策に関することは、「議会での質問」でこなす必要が出てくる。また、政策として行政が取り上げなければ、解決が難しい問題も増えてくる。そこで、先ず、具体的な政策に練り上げるまでの時間等を質問によって短縮しようとの発想になる。

更に、地方議員にとってみれば、議会での「個人質問」は、自らの存在意義を住民にアピールする大きなチャンスになる。ここで狭い意味での「口利き」から広く議会での「質問」までが、一つの「省時間ビジネス」として成立することになる。

住民からの要求に対応する議員の行動である以上、それは投票への見返りを計算してのことだから、職業としての「口利き」として成立する。ここに省時間ビジネスが地方議員事業という新たな事業を生み出す。

ここにおいて、狭い意味での「口利き」だけで、議会での質問は行ったこともないというベテラン議員も却って目立つようになる。住民にとって、質問の有無を調べることは容易だから、議会ウォッチャーと呼ばれる人たちが槍玉にあげるのは必然の成りゆきだ。

一方、
先の記事で述べた様に、細かい地域単位の話に終始することが多く、自治体経営に対する論点・争点を設定する議論は首長・行政にお任せが実情だ。従って、省時間ビジネスを営む地方議員という個人事業主が増加することになる。議会改革を標榜する議員もこの個人事業主に分類される。あたかも、定年退職した団塊世代に個人事業主が増えるように、である。
 『議会報告会の現状とあり方~地方議員と住民の姿勢が試される150729』

しかし、議会改革は個人事業主によって行われるものではない。個人事業主の集合体である会派組織が関与する課題なのだ。特に地方議会の会派組織は、著しく保守的であるから、形式的な改革に応じても、実質的に意味のある改革を実行するわけではない。そこで、住民の顔色を窺うように、情報提供の施策を進めることになる。

ここで問題は個人事業主と会派組織によって運営される議会が、必然的に自治体経営に対応できないということだ。即ち、自治体経営のおける経営者、通常の株式会社における取締役、を輩出できないということだ。おそらく、現在の「二元代表性」と呼ばれるシステムでは無理なのだ。

既に旧聞に属するが、欧米諸国では様々なシステムが試みられ、その一つに、首長の配下に議員から経営幹部を引き上げる方法があるとのことだ。議会内閣制との呼び方だったと覚えている。
即ち、議会の中に、「経営幹部―個人事業主」の組織をつくるだ。これで解決がつくとは、必ずしも思わないが、検討の余地はあると考える。

http://blog.goo.ne.jp/goalhunter_1948/e/420e39533e2dca0ccaaea87ed6230596

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