2015年8月4日火曜日

「所沢市エアコン問題」の解説記事のご紹介について

<所沢市民のブログより>
 
最近、狭山ヶ丘図書館分館の新刊本コーナーから、「片山善博の自治体自立塾」(著者片山善博、2015520日発行)を借りて読んでみた。この本の冒頭で著者は、「以上のような現状を踏まえたうえで、自治体が自立するにはどうすればいいか。この問いに具体的かつ実践的に答えるべく、これまで「日経グローカル」誌に書き綴ったものをまとめたのが本書である」と述べている。この本は、36項目の解説から構成されているが、最後の36番目の項目が「36議会の自立、首長の自立 自律と自立の二元代表制」で、地方自治の二元代表制の説明がなされている。二元代表制の相互牽制の仕組みがうまく機能しない悪い事例が二つ取り上げられており、その一つが、所沢市議会なのである。あれだけテレビや新聞を騒がした「所沢市エアコン問題(住民投票)」ですが、ではどうすればよかったのかというマスメディアの解説記事はなく、私たち市民も、「あれはいったい何だったの?」という感じです。では、地方自治に詳しい片山善博教授の解説を少し長くなりますが、読んで見てください。

36議会の自立、首長の自立 自律と自立の二元代表制

 わが国の地方自治は二元代表制である。議会と首長のいずれもが住民から直接選ばれる。議会と首長にはそれぞれ異なる権限と役割が与えられるが、両者の間に上下の関係はなく対等である。その対等で自立した二元が互いに牽制し、バランスをとりながら自治体運営をつかさどる仕組みである。

 どうしてこんな基本的なことを改めて述べるかといえば、多くの自治体でこの二元代表制の仕組みが必ずしも良く理解されていないとしか思えない実態が、しばしば見受けられるからである。

 まず、議会の意向に過剰に気を使う首長が数多くいる。議会との対立や摩擦などもってのほかで、「与党」と称する多数会派との間に意見の相違すらないよう、何事も入念にすり合わせる。ここでは、議会に提出する議案は、事前に「与党」の了解を得られたものに限られる。これだと国政の議院内閣制の場合と同じやり方になってしまい、折角の二元代表制の仕組みは生かされない。

 逆に、議会の側が首長の意向に過剰に気を使うケースも見受けられる。首長が出した議案に対し多くの議員が不満を持っていて、一部の議員が質問を通じて主張の翻意ないし「改心」を求めるものの、首長がそれに応じなければ、無傷のまま議案を通してしまう。あっさり否決したり、修正したりすればよさそうなものだが、それでは首長の顔をつぶすことになるなど、余計な心配りをしたりするのである。これも、二元代表制が機能していないといっていい。

(「前者として、東京都政の事例を取り上げる。・・・・・」以下は省略します)

 一方、首長の出した議案に文句や不満があるにもかかわらず、結局はそれを通してしまっていたのが埼玉県所沢市議会である。所沢市では2015215日、自衛隊基地の傍で防音対策を施した学校を対象に、エアコンを設置すべきか否かを問う住民投票が実施された。

 この住民投票をめぐっては、もっぱら市長のユニークな考え方や独断が取りざたされたり、批判の対象にされたりした。それはそうかもしれないが、筆者などは市長ではなく、むしろ議会の態度の方を問題視すべきだと考えている。

 かねて該当の学校に順次エアコンを設置する方針が決められていて、すでに設置済の学校もある、ところがそうするうちに市長が変わり、新しい市長はその方針を否定し、その後の予算案にエアコン設置費を盛り込もうとしなかった。

 それに対する議会の態度である。もとよりエアコン設置方針を承認していたであろう議会は、必要経費が盛り込まれていない予算案には不満があるはずなのに、それをそのまま通してしまっているのである。さすがにそれではまずいと思ったのか、その後「教育環境の改善を求める決議」案を賛成多数で可決して市長に再考を求めたり、保護者ら約16000人の署名を添えて提出されたエアコン設置を求める趣旨の請願を採択したりもする。

 それでも市長が考えを改めないことから住民投票の署名集めなどが始まったのだが、どうしてそんなことで住民投票をしなければならないのか、何の因果で、保護者たちに署名集めなどの難儀を強いなければならないのかと、筆者などは嘆息せざるを得ない。

 エアコン設置について議会が決議し、さらに請願を採択までしているのに、市長がそれに従おうとしない。それならば、議会は市長が提案した予算案を修正すればいいだけのことである。予算案の編成と提案は首長の専権事項であるが、議会にはそれを修正する権限が備わっている。

 その修正で、例えば各年度数校ずつエアコンを設置するとすれば、そのための財源を確保するのはさほど難しいことではない。もし財源が見つからないのなら、他のいずれかの歳出予算を削ってそれを充てればいい。数年間に限り、固定資産税や住民税の税率をほんの少し引き揚げる手法だってある。こうして議会がちゃんと自らの権限を行使し、不備な予算案を正しておけば、こんなことで住民投票までしなくても良かったはずである。

 二元代表制のもとでの議会は、首長に遠慮することなく、住民の意思をよく把握し、予算案を含む議案をよく吟味し、必要な修正を施す。あるいは、議会自ら必要な議案を提出し、成立させることによって、首長の怠慢や考え違いを正すという本来の役割を果たしてもらいたい。
http://blogs.yahoo.co.jp/tokocitizen_c14/42146247.html

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