2017年5月23日火曜日

図書館と議会の関係

<武蔵野市議のブログより>


公立図書館には、議会図書室を支援することが求められていることをご存じだろうか? 一方で、多くの議会図書室は物置と化している。このままでもったいない。どのように活性化すればいいか。
 
武蔵野市議会
■図書館法
 
 ほとんどの自治体に公立図書館があるように自治体議会には議会図書室がある。これは、地方自治法により図書室の設置が義務づけられているからだ(詳しくはこちらをご参照のこと)。
 
 もうひとつ、法律のついでに図書館法第三条も確認してもらいたい。そこには、図書館奉仕として、以下のように書かれている。


 図書館法 第三条

 図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望にそい、更に学校教育を援助し得るように留意し、おおむね左の各号に掲げる事項の実施に努めなければならない。

一  郷土資料、地方行政資料、美術品、レコード、フイルムの収集にも十分留意して、図書、記録、視覚聴覚教育の資料その他必要な資料(以下「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。
二  図書館資料の分類排列を適切にし、及びその目録を整備すること。
三  図書館の職員が図書館資料について十分な知識を持ち、その利用のための相談に応ずるようにすること。
四 他の図書館、国立国会図書館、地方公共団体の議会に附置する図書室及び学校に附属する図書館又は図書室と緊密に連絡し、協力し、図書館資料の相互貸借を行うこと。


 ここで注目したいのが四項で「議会に附置する図書室」、つまり議会図書室と密接に連絡し、協力し、図書館資料の相互賃借を行うことと書かれていることだ。
 条文の最初に「努めなければならない」とあり、あくまでも努力義務。やらなくてもいいとも言えるが、法律に書かれていることをどれだけ行われているか、まずは考えてもらいたい。


■「これからの図書館」に議会支援
 
 文部科学省は平成18年3月に、これからの図書館の在り方協力者会議による報告書「
これからの図書館像」を公表している
 この中の第一章よびかけには、議会について下記の記載があり、議会図書室の記載と図書館による議会支援が書かれている。


『議会は、立法や審議、調査、監査等の機能を果たすためには、多角的な視点からの情報を収集し、活用する必要があります。議会には議会図書館が設置されていますが、公立図書館の資料やレファレンスサービスも利用し、より幅広い資料の中から司書が迅速かつ体系的に提供する情報を活用することにより、社会の変化や地域住民からの要望を的確に反映した条例や予算等を定めることが可能となります』

 しかし、『図書館サービスの内容は,まだ住民や自治体職員・地方議員に理解されていないため,積極的かつ具体的な広報が必要である」とも書かれており、議員に理解されていないことを指摘、図書館側からの広報がより必要とも書かれていた。


■議員の理解

 武蔵野市の場合は、平成22年4月に武蔵野市の
図書館基本計画を策定し「市議会議員が行う政策立案等への支援を行います」と書かれている。
「これからの図書館像」や図書館法の、いわば精神がこの計画に書かれていることになり、議員の政策立案への支援が、図書館のミッションのひとつでもあると計画で明文化されたことになる。このことは評価したい。
 
 では、実際に武蔵野市の図書館基本計画にかかれているこの支援をどのように行っているのか。以前、一般質問で取り上げたことがあるが、その時の答弁は、議員から要請がないと図書館だけで行うわけにはいかないというものだった。確かに議員が必要とする、あるいは、知っていないと、図書館の機能を発揮できないことになる。「これからの図書館像」が指摘したとおりの状況ともいえ、このままでは、法や計画に書かれていることは宝の持ち腐れになってしまう。
 
 私は図書館のレファレンスサービスを使い、一般質問への資料を探す時などで頼りにしているが、図書館の重要な機能にレファレンスがあることに気づいていない議員は多くはないように思えている。報告書は11年前のものだが、現状は同じような状況だろう。まずは議員側の理解を深めることが最優先と考えられる。
 
 
■議会図書室設置は義務、議会事務局はなくてもいい
 
 議会に図書室があるのは、地方自治法で設置が義務づけられているからだが、この法をよくよく読むと、市町村の議会事務局には設置義務がないことに気が付く。
 
 138条には  都道府県の議会に事務局を置くと義務となっているが、2項に「市町村の議会に条例の定めるところにより、事務局を置くことができる」とあるように「できる」規定とされている。法的には、義務である議会図書室の設置ほうが重要度は高いことになる。
  
 ところが市町村議会で議会事務局を設置してない例はなく(他と兼務はある)、当然ながら職員を配置している。重要度が高いはずの議会図書室に職員が配置される例は少なく、法的な意味とは逆転されているのだ。

 
■職員を配置しているのは1%

 2015年に私も参加して全国の議会図書室を調査した(※)。そのときの設問のひとつに「議会図書室に専門の職員(司書)がいるか」を聞いたところ、回答では、市議会で専門職員(司書)を配置しているのは1%でしかなかった(図)。
  

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 議員が政策を作る時には、書籍という情報だけではなくインターネット上にある情報も活用することが多い。しかし、どの情報を活用するのか、活用できる情報がどこになるのか分かりにくいのが実情だ。
 そこで、このような情報や資料が欲しいとレファレンスサービスを使うと、どの書籍に必要な情報があるというだけでなく、インターネット上のこのサイトにもあることを教えてくれる。しかも、無料だ。使わない手はないだろう。
 
 このような機能が図書館にはある。本来であれば、同じような機能、より希望を持って言えば、議員に特化した調査能力も持つ機能が議会図書室にあるべきだ。そのことにより、『社会の変化や地域住民からの要望を的確に反映した条例や予算等を定めることが可能』になる。


■まずは連携

 とはいえ、今のご時世で職員を増やすことはハードルが高い。
 となれば、公立図書館をもっと議会、議員が使うことで、機能が分り、議会図書室に同様に機能を持たせるべき、連携をすべきとなるのではないだろうか。少なくとも、図書館をもっと活用することで、議会や議員の調査能力はより拡充されることになる。まずは、ここから始めるべきだ。
 
    ◆

  ということで、長々と書いたが、この趣旨で、政策づくりに役立つ図書館&議会図書室改革の勉強会を6月2日に開催します。
 
 図書館を活用した政策づくりの具体例と、議会図書室に司書を配置し、強い議会い議会」を支える「使える」議会図書室へと改革した呉市議会から図書室改革の議員への効果についての報告。議会改革と議会図書室改革のポイントについて、江藤俊昭 山梨学院大学教授の講演などがあります。
 
 再度の案内ですが、ぜひご参加ください。
 
詳細と申込みはこちらです。


※早稲田大学マニフェスト研究所とローカルマニフェスト推進地方議員連盟調査
 「議会図書室アンケート2015」より (
こちらのサイトにデータあり

(写真は武蔵野市議会の議会図書室)

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