2018年8月31日金曜日

地方議会の会議術

<朝霞市議のブログより>

昨日、埼玉新聞で朝霞市議会の問題が取り上げられましたが、その反響を見ていると、議会の会議法、ひいては標準会議法が知られていない、ということを改めて認識しました。
そこで今回、その会議法をご案内いたします。

何かを決める標準会議法とは、
①提案→②提案に対する質疑→③提案に対する討議・賛否を表明した討論→④採決
というダンドリを踏みます。市議会も、町内会の総会も、生協の総会も、労働組合の大会も、マンション管理組合の総会も、基本構造はこれです。
提案は提案者しかできませんし、提案への質疑は自己主張をすることより疑問点や他の案を採用しなかった理由の解明などを行います。次の提案に対する討議・討論のところで、会議の参加者が意見をたたかわせて、提案が妥当だとの認識が広がれば採決で賛成が起きるし、提案がおかしいと説得されていけば反対が増えていきます。
採決で可決要件の数の賛成を得られれば、決定事項になります。市議会であれば、市民に義務を課したり、負担を求めることを決めることができます。

この会議法にはさらに細かい前提と運用があって、意思決定をできるだけ少数者にも関与させて、かつ少数者も決定過程に合理性を持たせることを目的にしています。
一方で弱点もあります。この会議法は、意見の異なる参加者がいることが前提でそれに自己規制を求めてできるだけ静穏に多くの意見表明を求める仕組みなので、参加者の自己主張が強いときに機能します。今の日本みたいに消極的な人ばかりになると、シャンシャン総会になったり、出来レースになって、盛り下がります。また議長がバランスのよい人がならないと、組織のなかに敵意だけが残ったりする危険性もあります。
NPOの参加者の能力を触発する場面や企業の開発の現場などの会議では、違う方法が採られます。
株主総会も会議法の基本構造は同じですが、総会の司会運営と提案者が一体になっているところが、他の会議と違うところです。

よく自治体議員が、成果を上げた質問としてビラなどで紹介するのは、この枠外にある、議題とは関係なく問題を取り上げる「一般質問」という会議の場面です。これは、普通の会議では「その他みなさまから何かありませんか」というような自由討論の場面です。自治体議会、どうもここだけが豊富化されている感じが否めません。
さらに詳しく説明します。

①会議の成立・その他
会議を始めるにあたって、会議の成立要件があります。
会議の構成員(議員とか代議員とか会員など)の過半数が通常です。
民間の会議の場合は委任状出席がありますが、市議会の場合は本人の出席しないと数になりません。
会議に入る前に、議長の選出を行います。議会は固定的に議長を置くので、それは2年または4年に1回、議長を選べば終わりです。

②提案
提案は、議題の確認と提案理由の説明が行われます。
ここでの大事なところは提案理由の説明の十分さです。
また自治体の議会では、提案の本体は文書でなければならない、としているのが標準で、朝霞市議会もそうなっています。
また、議員にも提案権がありますが、提案に必要な議員の賛同者の数が必要なことが大半です。

③質疑
提案を受けて、提案内容に対して質疑をします。
提案理由ではわからないこと、提案内容がうまくいくのか、疑問点を提案者にぶつけ、提案者に答弁を求めます。
民間の会議では、質疑や意見を求められる場面です。
自治体議会では質疑だけに限定して行います。
自治体議会の会議規則の多くは「自己の意見を述べてはいけない」と定義されていて、その解釈が問題になります。権利の制限や義務を課すことを決められる議会では、乱闘につながりやすいので、意見の違いを際立たせる前に、落ち着いて疑問点を明らかにする時間を設けましょう、ということなのだと思います。
一方、天下の市議会で語句の確認程度の質問大会してもしょうがないし、違う立場の意見を持っているからその疑問点が出てくるでしょう、という点ではあまり厳格に取らない方がよいと思います。
ただ、あくまでも、考え方が違う人とも議案の問題点を共有する目的もあるので、会議の公正性を担保するという点では、質疑で自己の意見を差し挟むのには自己抑制が必要だと思います。提案者でもない人に論争をふっかけるような質疑はやめましょう、ということなのだと思います。
「質疑」を効率的に進めるためには、提案者の提案理由の説明や、資料提供が充実していることが前提です。根拠薄弱な提案理由で、資料も不十分な状態では、質疑はこってりやらなくては危険ですし、質疑を手抜きすれば、いったい何を見てこんなこと決めたのか、と議会に対する不信が生まれます。市民の方が議事録を読んで、その議案の必要性も安全性も読み取れない市議会の議事録ができあがっているとすれば、審議の効率化のなのもとでの、提案者の説明不足か、議員の質疑の手抜きをしているのだと思います。

④討論
採決に向けて、提案者以外の会議の参加者が、賛成してもらいたい、反対してもらいたい、と自分の意見をまじえながら説得する場面です。会議法のフレーズのなかでは、議員が本格的に主張をする場面です。
自治体議会の場合、討論は1人1回しか発言できない、とされていて、意見を言う前に賛否を明らかにせよ、となっていることが多いので、実際には、採決に向けての、議案に対する見解や態度表明の場になります。意見の違う議員を非難しまくるのか、採決態度を変えてもらうように説得調で話すのかはその議員の見識です。
考え方の違う人がいることの前提で結論をまとめる自治体議会では、議員として採決の次に重要な仕事だと思います。

⑤採決
そして意思決定の最終段階が採決です。賛成者の数が「議決要件」を満たしていれば可決です。
通常議案は過半数出席の、出席者の過半数で可決します。ただし、議員の除名(強制に辞職させる)などは、多数派がやりたい放題やって、少数の民意を排除するようなことは避けなければならないので、4分の3以上の出席、3分の2以上の賛成が必要です。
朝霞市議会では、④の討論で特に意見がなかった場合、「可とすることに異議ありませんか」として異議のないことを確認して全会一致とする方法が採られることもありますが、衆議院では異議がなくても必ず起立なり投票なりで意思を確認しています。
ルール以前の会議の一般原則として、賛成と反対が同数の場合は、議長は反対しなければならない、という慣習があります。無理に制度を変えるより、現状維持にしておくべき、という考え方からです。しかし多数派の強行採決みたいなことが当たり前のこの国では、この原則はあまり守られていませんし、朝霞市議会でも委員会などではこの原則を守られない運用がしばしば見られます。

以上が会議の基本構造です。
さらにその上に、同じ提案者が同じ内容の議案を同じ会議日程に複数出してはいけない、とか、採決はやり直しができない、とか、発言自由の原則とか、さまざまな慣習法があって、会議の公正性を担保しています。

市議会の場合、「常任委員会」という分科会があるので、質疑と討論の間に、さらに専門的に上記の提案から採決を委員会で重ねて詳細な審議をします。
また、対案として修正案が議員から出た場合は、修正案の審議も同様に行います。
議会はできれば歩み寄って結論出した方がよいところです。賛成だけどもここを直せば、反対だけどもここを直せば、と議員が思う場面は少なくありません。その合意形成をして議案を変える場面は、この会議法のなかでは位置づけられておらず、それらは、会議場外で行われ、不透明にならざるを得ません。それに対する改革として、質疑と討論の前に、「議員間討議」を入れている自治体議会もあります。

★番外編 一般質問
また、議題にしないとその組織(自治体)の問題を議論できないのか、という問題意識で、自治体議会には「一般質問」という時間が設けられています。
民間の会議では、議題の審議が終わって、その他参加者から何か問題やご意見があれば、と意見を求められる場面に近いものです。
議員が、後援会だよりや会派ニュースで成果として報告するのは、この一般質問で、少し議会に詳しい市民にとっておなじみのものです。
一般質問では、議題にならない話や、市役所の日常的な業務の問題などを指摘して、行政の自発的な改善を促す場面です。制約が少ないので議員は力が入りやすいところです。朝霞市のように市長が提出した議案のほとんどが無傷で通る議会の場合、行政は何が飛び出すかわからない一般質問の対応が議会対策の中心になります。
議案とちがって審議範囲が不明確なので、行政側にだけ不利にならないように、質問時間制限や質問の数日前までの事前通告制が設けられています。事前通告の強弱は議会によってで、詳細まで通告しなければ行政は答弁する義務を負わないとか、通告しなければ質問できない、とか、逆に通告がそもそもいらない、とか自治体の規模や歴史によって違います。
個人プレーになりがちな一般質問の是正だと思いますが、他人の一般質問に、同趣旨の賛同質問みたいなことができる議会があります。
私としては一般質問も大事だけども、議案ももっとじっくり審議しましょうよ、と思ったりします。

★番外編 会議の日程や議題の順序は誰が決めるか
会議の日程や議題を、提案者と意の通じた議長が、反対者が会議に出にくいような状態にして勝手に決めたとしたら、会議の公正性は担保されません。
そのため、会議の日程の調整や会議でのイレギュラーな事態の対応として、議会運営委員会が設置されています。ここで議会日程が多数派の独断で進められないようにしていて、慣習では議会運営委員会の全会一致で日程などは決めます。ただし、非常事態などで決められない事態がないよう、明文化しているルールでは過半数議決が可能です。会議の運営のためのルールは、会議の正統性を担保し、少数派もルールにしたがってもらうために、全会一致で決めたり変えたりすることが大事です。
国会で強行採決と言われるのは、こうした議院運営委員会での議事調整の合意形成を図らずに、採決日程を決めてしまうことです。

★議員平等の原則
市議会で、議員は平等という位置づけです。上司はいないという考え方です。
不祥事を起こした議員がいると、市長に「ナントカしろ」という電話がよくかかってきますが、上司がいないのでお門違い、ということになります。ましてや市長は議会の上にいるわけではありません。議会に手を突っ込んだら、大問題です。
不祥事が議会内であったり、議員という職権のもとで行われたのなら、議会で合議で懲罰にかけます。そうでない場合は、世間の刑法なり、民法の不法行為で責任を問うしかありません。
ただ一方で、議員には、政治家としての先輩や上司という存在がいます。政党での序列関係や、議会内の会派でのリーダーと構成員という関係です。そのなかでの教育や統制として、品位を保つことを求めることが必要なのではないかと思ったりします。


http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2018/08/818-40d4.html

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