2016年1月24日日曜日

【フォーラムレポート】18歳選挙権に向けて、若年層啓発・主権者教育実践事例を学ぶ

<議員NAVIより>

2016年1月14日、早稲田大学マニフェスト研究所主催による「シティズンシップ推進実践フォーラム2016」が同大学日本橋キャンパスホールにて開催された。これは昨年の通常国会で成立した改正公選法を受け、2016年夏の参院選から選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられることに関し、「シティズンシップ」を育成していくのにどんな取組みが必要か、広報啓発や主権者教育を担う機関・団体が連携し実践するため、主に選挙管理委員会、教育委員会に向けて理論と事例を学ぶ機会として設けられたものである。当日会場には120名を超える参加者が駆けつけ、「18歳選挙権元年」の今年、どう主権者教育を行っていくかという課題への関心の高さがうかがわれた。今夏の参院選に向け、各地で今後実践が積み重ねられていく予定である。

 フォーラムの冒頭では「18歳選挙権元年に求められること」として、早稲田大学マニフェスト研究所事務局長の中村健氏による問題提起がなされた。71年ぶりの投票年齢引き下げは日本の政治にとって大きな変革であり、今後実践の積み重ねをしていくことで、この夏に予定される参院選を変革の契機としていきたいとした。

熱気あふれる会場の様子。18歳選挙元年の今年、主権者教育への関心の高さがうかがわれた熱気あふれる会場の様子。18歳選挙元年の今年、主権者教育への関心の高さがうかがわれた

 次に特別講演として、文科省初等中等教育局主任視学官の梶山正司氏より「18歳選挙権をめぐる動き~副教材をもとに、求められる主権者教育とは」として、今回作成された高校生用の副教材(「私たちが拓く日本の未来~有権者として求められる力を身に付けるために」総務省・文部科学省)に関する詳細な内容説明、学校教育における政治的中立性の確保や政治教育における留意点などに関するお話があった。さらに総務省自治行政局選挙部管理課選挙管理官の小谷克志氏からは、「18歳選挙権をめぐる動き~副教材をもとに、選挙管理委員会の役割とは」として、副教材の説明のほか、これらを使った主権者教育がどのように各地で実践されているかにつき、東京都選挙管理委員会や福島県選挙管理委員会、福井県選挙管理委員会の取組みなどを交えつつお話があった。
 その後、主権者教育実践事例として、2015に行われた大阪W選挙という実際の選挙を素材に模擬選挙を実施した大阪府選挙管理委員会やクラーク記念国際高校・大阪梅田校、代々木高等学院などから報告がなされた。いずれも模擬選挙をきっかけとして、選挙のプロセスや候補者選びを経験することで、学生の選挙に対する関心の向上につながったとした。
 続いて林大介東洋大学助教授からは「未成年“模擬”選挙が直面した公職選挙法と教育の壁~2016年へ向けた提言」として、社会の担い手として主権者を育てる、真の民主主義を子ども時代から育む意味でも主権者教育は重要であると説いたほか、これまで林教授が未成年模擬選挙推進ネットワークとして取り組んできた模擬選挙に関する解説や諸外国の状況を説明した。また、18歳選挙権の意義と課題や政治教育の今後の展開について、中立性を確保するためにも様々なアクターが関わることが重要であるとした。
 この後、先進事例の発表があり、子ども議会(茨城県大子町)、大学における期日前投票所運営(青森中央学院大学)、地域課題解決型キャリア支援(可児市議会)など若年層の社会参加意識の醸成や投票率の向上につなげていくための実践や提言がなされた。
 フォーラムの終盤には早稲田大学政治経済学術院教授の片木淳氏による「シティズンシップ教育と選挙~法改正、制度改正も視野に」との講演・提言、最後は総括として早稲田大学名誉教授、早稲田大学マニフェスト研究所顧問北川正恭氏による「地方創生時代における主権者教育の役割」と題した講演があった。

 フォーラムでは自治体議会や議会事務局の果たすべき役割に関しての言及があるなど、『主権者教育』は議会・議員・議会事務局にとっても重要なテーマである。地方政治不信や投票率の低迷、議会不要論等の改善につき、若者だけでなく大人も含めた主権者教育=シティズンシップ教育が救世主となるかどうかは、現場の取組みにかかっているともいえる。

◆マニフェスト研究所「シティズンシップ推進フォーラム2016」パンフレット
http://www.maniken.jp/pdf/160114citizenshipforum.pdf

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