2015年3月17日火曜日

なぜ質問しない議員ばかりに?地方議会の「怠け者の楽園」ぶり

<ダイヤモンドオンラインより>

◆住民の関心度が極めて低い地方議会~皆で手抜きをする「怠け者の楽園」に~

全国の地方自治体で現在、3月議会が開催されている。来年度予算を審議する自治体にとって最も重要な定例議会なのだが、住民の関心度は極めて低い。どの地方議会もおそらくガラガラの傍聴席に閑古鳥が鳴く状況ではないか。住民の地方議会や議員に対する不信感は増す一方で、双方の間に深くて暗い溝が広がっている。

そんな地方議会の実態を一言で表現すれば、「怠け者の楽園」だ。皆で仲良く手抜きするというのが、いわば暗黙の了解事項となっている。議員本来の活動に真剣に取り組む人はごくごく一握りで、しかも彼らは周囲から冷たい視線を浴びている。圧倒的多数の仕事をしない議員にすれば、迷惑で目障りな存在でしかないからだ。

そうした面々に足を引っ張られることも多く、議員活動を真面目にやればやるほど、逆に不自由を強いられるはめになる。その代表的な事例が、議会での一般質問だ。

地方議会の役割の1つが、執行部に対する監視と言われている。その役割を果たすためのツールの1つが、議場での一般質問である。首長ら執行部と対峙し、様々な質問や意見を直接ぶつけて回答を求める場である。議員活動の根幹を成すもので、日頃の調査・研究・学習の成果を発揮する晴れの舞台とも言える。それゆえに、議員の質問の機会は可能な限り認めるのが、議会本来のあるべき姿であろう。

もちろん、それは質問したいという議員の申し出を極力、認めるべきという意味であり、執行部に聞きたいことがこれと言って浮かばないという不勉強な議員に質問を義務付けろ、ということではない。そんなことをしても、やらせ質問が増えるだけで意味はない。

ところが、議員の一般質問に制限を設けている地方議会が少なくない。執行部側が議員にアレコレ質問されることを嫌がり、質疑応答の場面をできるだけ少なくしたいと考えるのはよくわかる。彼らにとって隠したいことや言いにくいこと、知られたらまずいと思っていることが山ほどあるからだ。

しかし、そうしたことを問い質すことこそが、議員の役目である。なにしろ日本の行政機関は、本来、住民に知らせるべき情報さえも、聞かれない限りは明らかにしないという習性を持っているからだ。積極的に情報公開するのではなく、聞かれて渋々やっと開示するという困った体質から、いまだに脱し切れていないのである。


◆ぬるま湯で続く馴れ合い体質~なぜ質問しない議員が増えるのか?~

議会側が議員の質問の機会を制限するのは、自分たちの手足を自分たちで縛ることに他ならず、矛盾した行為と言える。ではなぜ、議会側は自らの存在価値を貶めるような行為をあえてとるのだろうか。

答えは2つある。1つは「怠け者の楽園」を変えたくないという思いである。快適なぬるま湯から上がるのは嫌なのだ。そしてもう1つが、執行部との馴れ合い体質である。実はこの2つ、コインの裏表の関係となっている。そして、二元代表制の本来の機能を阻害させる最大の要因ともなっている。

ある自治体の幹部から、こんな本音を聞かされたことがある。「我々にとって一番良い議員というのは、勉強しない議員です」――。この言葉の意味を細々と説明するまでもないだろう。かつて政権政党の最高幹部が総選挙前に、「(無党派層が)眠っていてくれたらよい」と発言したことがあるが、それと同じである。

では、地方議会の一般質問をめぐる奇妙なルールをいくつか紹介しよう。

議員の一般質問を年間40人に制限しているのが、茨城県議会だ。議員間での申し合わせで決めたもので、2011年以前はもっと少なく年間30人だった。茨城県議会の議員定数は63なので、1年間に1度も一般質問できない議員、しない議員が3分の1に及ぶ。なぜ一般質問を40人に限定するのか、その数の根拠も明白ではない。

このため、真面目な議員ほど「質問したいことがあってもできない」と泣くはめになっている。今年1月に一部の議員から人数制限の撤廃を求める申し入れがなされたが、茨城県議会は譲らず、年間40人の制限を継続するとした。茨城県議会議員の報酬は月額75万円で、ボーナスを含めると年収は約1220万円である。この他に政務活動費が、年間360万円も交付されている。


◆相模原市議会で議員の質問がノルマ制になった本当の理由

議員に一般質問を事実上のノルマにしている珍しい地方議会がある。神奈川県相模原市議会だ。

相模原市議会では、48人いる議員の半数ずつ(議長、副議長を除くので23)が年4回の定例会ごとに、一般質問することになっている。つまり、全議員に年2回の一般質問を事実上、義務化しているのである。2007年の6月議会から始まったもので、毎回一般質問する仕事熱心な議員の存在が、導入のきっかけとなったと言われている。特定の議員に毎回質問させないように、新方式が採用されたというのが実態のようだ。真面目な議員ばかりが質問して議会だよりなどで目立つのは、癪にさわると考えたようだ。

相模原市議会を15年近くウォッチしている「相模原市議会をよくする会」の赤倉昭男代表は、「これまで毎回一般質問していた議員は新方式の導入に当初は反発しましたが、このシステムが経過するうちに毎回やらなくて済む゛楽゛を覚えたのか、おとなしくなりました。それまでさぼっていた議員も゛年2回ならいいか゛という感じでやっています。この方式も、楽して議員生活を過ごそうという魂胆からでしょう」と冷静に分析する。

質問や意見表明の自由を縛ることがおかしいのであって、義務化するのも筋違いである。そもそも、議場で語るべきものを持たない人や語れない人は議員になってはならないし、議員に選んではならない。もの言わぬ議員が議場に存在すること自体、あってはならないことだと考える。しかし、そのあってはならない議員ばかりという沈黙の議会も少なくない。

福岡県大任町議会の3月定例会が昨日(9)に開会し、11日まで開かれる予定となっている。この大任町議会に全国の地方議会関係者の注目が集まっている。現時点で議員から一般質問の事前通告はなく、大記録の更新が確実視されている(通告の期限は10日正午)からだ。

実は、大任町議会は全国屈指の゛沈黙の議会゛として知られる。人口5438(2014年末)の大任町の議員定数は、11(現員10)。どういう訳かもの言わぬおとなしい議員ばかりで、町議会での一般質問は2010年の3月定例会の1人が最後となっている。

「質問なし」がずっと続いており、この3月議会も一般質問なしとなれば、なんとまる5年に及ぶことになる。もちろん、最長記録の更新である。2011年の町議選で議員となった今期の議員は全員、一度も一般質問に立たずに任期切れを迎えることになる。まるで質問しないのが、大任町議会のルールであるかのようになっているのである。

論議なき議会をわざわざ傍聴しようと思う住民がいるはずもなく、26席も用意された傍聴席に座る人はいない。年間の議会傍聴者数は2014年が2人、13年はゼロ、12年は1人という惨憺たる状態だ。まさに、形骸化したセレモニーだけのアリバイ議会となっているのである。

 
◆質問なしの状態がなんとまる5年~大任町議会の議員報酬は「口止め料」?~

そんな沈黙の大任町議にも、きちんと議員報酬が支払われている。月額236000円で、期末手当を加えると年間報酬は3611000円。さらに、議場に通う交通費としての費用弁償が11000円支給される。これらがもの言わずにじっと議席に座っていることの対価である。議員報酬ではなく、「口止め料」とでも言うべきか。民主主義のコストとは、到底言えない代物だ。まさに究極の「怠け者の楽園」といえるのではないか。

こうした地方議会の実態をどうにかしない限り、地方創生など夢のまた夢でしかない。まずは地方議会を変えることから始めるべきだ。地域住民の役に立つ議会に、変えるのである。それには、働かずに踏ん反り返って平然と報酬を手にする議員を、真面目に働く議員に取り換えるしかない。議会改革の最善・最良・最短の道は、メンバーチェンジである。その絶好の機会である選挙をないがしろにしてはならないと考えるのだが、いかがだろうか。

しかし、そうは言っても「誰を選んだらよいか、皆目見当がつかないんだ」とお嘆きの方も多いのではないか。そういう方にこそ、きちんと働く議員の見分け方、選び方をまとめた拙著『トンデモ地方議員の問題』(ディスカヴァー携書)をお勧めしたい。統一地方選がいよいよ来月に迫っている。


 

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