2017年10月17日火曜日

全国約6割の地方議会が議員個人の賛否を公開、東京都議会は公開せず


THE PAGE より>

新たに選出された議員による東京都議会の初めての定例会は5日閉会しました。会期中は46件の議案が審議されましたが、都議会のホームページで議決結果を確認しても、それぞれの議員がどの議案に賛成、あるいは反対したのかは記されていません。
 全国では約6割の地方議会が議員個人の賛否を公開するなど、議会の情報公開のひとつのあり方として定着しつつあります。選挙公約で閉鎖的な都議会の「議会改革」を掲げた都民ファーストの会が第1党になりましたが、議員個人の議決行動が非公表のままとなっています。

記名投票のときだけ議員個人の賛否を記録
 


 都議会事務局によると、会派ごとの賛否は、都民に配布する「都議会だより」に掲載しています。この都議会だよりは都議会ホームページからダウンロードすることができます。

 都議会で採用されている採決方法は、「記名投票」のほか、賛成者が起立する「起立表決」、無記名で投票する「無記名投票」、議長が異議の有無を問う「簡易表決」の4種類があります。しかし、議員数127人と全国最大の地方議会である都議会では、正確な賛成、反対の数を把握する必要がなく、進行に時間がかからない起立表決か簡易表決で採決することがほとんどになっています。

 そのため、採決は短時間で行われますので、仮に会議を傍聴していても、起立表決の時に全議員の賛否を目視で把握するのは困難です。議員の起立時間はわずか数秒。議員座席表と議場を交互に見て確認を試みても、すぐに議員たちは着席するため、結局誰が賛成し、反対したのか完全に把握しきれないケースが大半です。実際、都議会事務局でも、起立表決時における各会派の賛否について、問い合わせがあればネット配信した本会議の映像データを確認して回答することもあるそうです。

 ただ、議員個々の賛否行動がまったく明らかになっていないわけではありません。「記名投票」の実施時にはホームページにも掲載している会議録に、議員個人の賛否結果を載せるといいます。しかし、会議録を調べてみると、もっとも直近に行われた記名採決は、20117月の第2回定例会までさかのぼることになります。

 このときは、東日本大震災を受け、当時の民主党などが提出した、都民や事業者、都が協力して省エネに努める「東京都省エネルギーの推進及びエネルギーの安定的な供給の確保に関する条例」という政策型の議員提案条例の採決と、新銀行東京に関する特別委員会・東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会の閉会中の継続調査をめぐり、賛成・反対それぞれの議員数が拮抗。どちらも記名採決を実施した結果、賛否同数となり、議長の裁決で可決したという経緯があります。

 つまり、都議会では賛成反対の数がよほど競っているとき以外は、会派としての賛否行動で把握しているということです。個人の信念で賛否を決める、会派側にとっては方針に従わない造反議員はいないという前提に立っているようにもみえます

全国地方議会の約6割、議員個人の賛否行動公開

 他の地方議会はどのようになっているのでしょうか。

 早稲田大学マニフェスト研究所が全国の地方議会を対象に行った「議会改革度調査2016」によると、議案に対する議員個人の賛否結果について、議会だよりなどの紙媒体では約6割、インターネットでは半数近い48%の議会が公開しました。その一方で、都議会のように非公開の議会も3分の1ありますが、議員個人レベルの賛否を明らかにすることが流れになってきているようです。

 賛否結果の公表について、議会改革にくわしい山梨学院大学法学部・江藤俊昭教授(61)は、「議員個人であれ、会派であれ、賛否結果を公表するのは意義あること」と話します。その上で「会派名だけではどのような集団なのかわかりにくい市区町村議会とは異なり、都道府県議会では、国政政党が会派をつくる場合が多いので、住民にも会派がわかりやすく、会派の方針に逆らう議員もまれなので、会派ごとの賛否の公表でも明らかにしないよりはベターだと思う」と一定の理解を示しています。

 ただし、「単に議決結果だけでは、審議の過程でどのような議論が行われたのかがわからない。議会というものは論点を明確にする場であり、そういう点をもっとしっかり伝えるべきだ」と指摘。賛成・反対にいたった理由を明らかにすることなどの課題を指摘しています。

 都議会事務局によると、議会の議決結果の公表の仕方は、「特に規則はない」ため、各地方議会の判断にゆだねられています。

 都議会では8月、都民ファーストの提案により、議会改革について話し合う「議会改革検討委員会」が設置されました。「同委員会ではこれから検討するテーマの整理を行っている最中。委員から提案があれば、議決結果の公表のあり方もテーマの1つに上がるだろうが、現時点で実際に検討されるか否かは不明」(都議会事務局)といいます。

 早稲田大学マニフェスト研究所の「議会改革度調査2016」では都道府県議会ランキングで47議会中36位と改革の遅れが指摘されている都議会。もっとも肝心である議場でどのように行動したかを、どのように都民に伝えていくことになるのか、注視されます。


 

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