2018年12月14日金曜日

犬山市議会がグランプリに輝く

<毎日新聞より>

第13回マニフェスト大賞

 日本最大規模の政策コンテスト「第13回マニフェスト大賞」(実行委員会主催、早稲田大学マニフェスト研究所・毎日新聞社共催、株式会社共同通信社後援)の授賞式が11月9日、東京都内で開かれた。各賞の最優秀賞を受賞した首長や議員、市民グループなどが取り組みの成果を発表した後の最終審査を経て、愛知県犬山市議会(最優秀成果賞)がグランプリの大賞に輝いた。今回は2242件の応募があった。最優秀賞受賞者・団体を紹介する。

    ■グランプリ大賞 最優秀成果賞

    愛知県犬山市議会

     犬山市議会は議会改革を進める中で、情報公開の推進と議員間討議などを取り入れてきた。その第2ステージとして「市民参加」に重点を置き、市民の声を含めた意見を集約して、行政に提案と改善を求める議会を目指している。
     具体的な取り組みとして「市民フリースピーチ」を始めた。定例議会の開催中、市民が議場で市政全般について自由に5分間のスピーチをできるようにした。市民から出た意見について、議会開催中に議員の全員協議会で議論し、行政への申し入れなどを行う。市民フリースピーチはこれまでに3回開かれ計20人が発言した。市政に対する市民の意識が高まり、選挙での投票率アップと議員のなり手不足問題の解決につながると期待される。
     登壇した米ニューヨーク出身のビアンキ・アンソニー市議会議長は「市民と議員、議員同士、お互いに学び合うことが基本だ。市民の希望にも近づく」と受賞の喜びを語った。

    ■最優秀マニフェスト推進賞(首長部門)

    小林常良・神奈川県厚木市長

     3期12年間に取り組んできたマニフェスト政策の推進とPDCAサイクルによる改革と成果が評価された。
     第1期では、副市長をトップに行政推進体制を構築し、各部長に「チャレンジ宣言」を課した。第2期は総合計画にマニフェストで掲げた政策を盛り込んだ。さらに、全国で初めて市民参加型の外部評価をライブ動画で配信するなど、PDCAサイクルを推し進めた。
     第3期でマニフェスト政策による成果として、行政改革による「効果額」が255億円に上り、市債残高を100億円削減した。働き方改革では昨年度、「スマート・ワーク宣言」をし、全職員の時間外勤務を計1万5000時間(約4000万円)縮減した。小林市長は「改革はエンドレスで、行政は最大のサービス産業だ」と語った。

    ■最優秀マニフェスト推進賞(議会部門)

    林晴信・兵庫県西脇市議会議長

     林議長は当選7回のベテランだが、無所属、無会派を通してきた。2017年11月の議長選にマニフェストを提示して立候補し当選した。
     マニフェストは(1)定例会議事日程に公聴会を制度化(2)議員定数について2年以内に結論を出す(3)議員間の議論を活性化(4)議会の本来の機能を取り戻し市民に信頼される議会づくりを行う--。
     マニフェストは選挙1週間前に全議員に手渡すとともにホームページやブログ、SNSを通して広く告知した。選挙当時の演説をインターネット中継し、会議録にも掲載されるなど、情報公開を徹底した。

    ■最優秀マニフェスト推進賞(市民部門)

    信濃毎日新聞×6高校

     信濃毎日新聞は今年8月5日投開票の長野県知事選に先立ち、早稲田大マニフェスト研究所のマニフェストスイッチ書式に基づき、候補者の主張や政策を分かりやすくまとめた特集紙面を作った。授業で新聞を活用している教員らで作る「長野県NIE研究会」と連携し、高校6校の1~3年生計1189人が模擬投票を行った。
     生徒たちは「本物の選挙」を通して、政策本位で候補者の主張を見極めたうえで自分の考えで投票することの大切さを学んだ。知事選での投票率は高3世代が全体より10ポイント以上上回り、この授業を受けた生徒に限ると7割以上になった。主権者教育の一環として注目される。

    ■最優秀政策提言賞

    兵庫県川西市議会会派「明日のかわにし」

     市の財政に限りがあるのに、これまでの議会会派の予算要望をすべて事業予算化すれば財政破綻は明らかだ。そのような矛盾を解消するため、行政の予算編成プロセスに対する政策提言として「マイナスの会派予算提案」を市長に対して行った。いわば総花的な「あれもこれも」から、事業の選択と優先順位を意識した「あれかこれか」の予算編成を求める提案だ。
     提案する総概算金額は原則マイナスとする、などのルールに基づいて予算提案を作成した。予算提案をきっかけに、事業の優先順位に関する考え方や観点から行政と実質的な議論を交わす機会が増えた。会派予算提案をさらにブラッシュアップしていくという。

    ■最優秀コミュニケーション戦略賞

    Team Sendai

     10年9月に発足した仙台市職員の自主勉強会で、メンバーは部署や職種、肩書を問わない。大きな活動の一つが11年3月の東日本大震災における体験や教訓を伝承する「仙台市職員からみた震災記録チーム」だ。
     ヒアリングや震災伝承イベントを定期的に開催し、これまでに延べ約1400人が参加。17年度から常葉大学と東北大学との共同研究に発展し、18年度からは市の事業として位置づけられた。
    この活動は、職員が災害現場で向き合った苦労や工夫など個人の体験を聞き取り、将来への教訓や他の災害にも生かせる知恵や事実を明らかにしていく「災害エスノグラフィー調査」という手法で記録された体験談をベースにしている。毎年3月に震災伝承イベントを開催している。

    ■最優秀シティズンシップ推進賞

    NPO法人SET

     岩手県陸前高田市広田町で「決して減らない活動人口」を生み出す活動を展開している。関東圏在住の大学生たちが広田町で1週間滞在し、町のためになるアクションを企画、実行し、報告まで行う。13年3月に始まり、徐々に活動は拡大して今年は計38回開かれ、年間200人の学生が町と関わった。
     これまでの行政によるトップダウンのまちづくりでは、プレーヤーが育たない。また、地方創生戦略で自治体が描く人口増加施策は減少するパイの取り合いで本質的な解決策にならない。しかし、外部から来る若者が住民と相談しながら自主的なアクションを起こす「活動人口」は、毎年繰り返し行われ減少することがない。人口約3000人の広田町に年間延べ1000人以上の若者が訪れている。

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