2018年6月8日金曜日

議選監査は、制度設計上ありえない 

<武蔵野市議のブログより>

法が改正され議会からの監査員を選出しないことができるようになった。おそらく、初めて選出しない議会となったのが大津市議会だ。なぜ選出しないようにしたのか?
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 5月24日に行われたローカルマニフェスト推進地方議員連盟主催の早稲田定例会で大津市議会局次長、清水克士さんから大津市議会の考えを聞いた。


■制度設計で考える

 監査委員は自治体の事務や財政援助出身団体の監査を行う機関で執行部や議会とは異なる独立した機関だ。その事務局は自治体職員が担うため、完全に独立しているとは言い切れないところもあるが、自治体執行部が"お手盛り"で税金を使うことを防ぐためには必要不可欠な機関といえる。

 その監査委員は、地方自治法で人口25万人以上の市では4人、そのうち1~2名を議員から。それ以外の市町村は2名とされ、1名を議員から議会の同意を得て首長が選任するとされている。しかし、2017年に改正が行われ、条例を定めることで選任しなくても良くなった。

 そのため大津市議会では、2018年度から議員の監査委員を選出しないことを全会一致で決めている。

 法改正については「
法改正で議選監査委員をなくすことも可能に」(2017年06月06日)の記事をご参照ください。

 大津市議会が廃止した理由は、三権分立があるように機関同士がけん制しあうことで正当性が担保される。監査の対象には議会費も対象となるのに、その対象となる議員が監査するのでは独立性が担保されていない。例えば、問題のある政務活動費の使い方をしている議員が監査になれば、問題に蓋をしてしまうことが可能で利益そう反になる。

 また、議選監査員は、その資質について、議員個人の力量に依存している。このようなことは現代の法制常識では、制度設計として根本的にあり得ないのではないか、というのが選出をやめた理由だった。


■守秘義務の問題

 以前、実際の議選監査委員を招いて実態を聞き、必要か、不要かを議論したことがある(「
議会選出の監査委員は必要か」2017年08月01日)。
 そのときのひとつの結論は、「市民代表の視点も必要と考えれば、議会選出の監査委員は必要」。「議会で入手できない情報を得られるのが監査委員。それを議会全体の情報として活用できるのか。監査委員になった議員個人の「得点」に使ってしまうのでは意味がない。議会が選出する以上、どのように監査をするのか。監査委員の情報を活用できる仕組みも作り、そのために適切な議員を選ぶべきではないか」というものだった。

 しかし、清水さんからは、これらの制度上の問題点だけでなく「守秘義務」との整合性も指摘されていた。

 それは、地方自治法198条の3第2項に「監査委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする」と規定し、監査委員に守秘義務を課しているからだ。監査委員が一般質問や委員会で質問をすると、その情報源は監査委員として得たものであれば法律違反をしていることになり、質問の範囲は狭められることになる(※)。議員としての活動が制限されていいのかの問題だ。

 ただし、その秘密が何を示すか具体的な規定がないため、守秘すべき秘密なのか、違うのかが監査委員以外には全く分からない問題も別にある。

 質問ではなくとも議会から選出された監査委員であれば、その監査委員が持つ情報は議会全体で共有すべきものとなるが「守秘義務」の範囲であればできないことになり、なぜ議会から選ぶのかとなってしまう。


■審議の矛盾

 さらに、議会から選出している監査委員か議会に提出する監査報告を決算委員会で否決(不認定)できるのかの疑問もあるとされていた。

 確かに議会代表として監査委員を選出しているのだから、その代表が認めたものを議会が否決できるのか。本会議で可否の議決をするさい、議選監査委員は、他の全議員が否決となっても否決ができるのかとの矛盾も考えられるとの意見もあった。

 さらに最も興味深いのは、参加者から議選監査委員を廃止したことでのデメリットはあるのか、との質問があり、逆に言えばメリットはあるのか? となり、それを考えると廃止してもなんら変わらないのではないかとの意見があったことだった。


■廃止してのデメリットは?

 また、監査委員を選出しなくても法的には議会として監査委員に監査請求ができる(地方自治法98条2)ことが知られていないとの指摘もあった。つまり、議会として監査を請求できる権利があるのに、監査委員を出す必要があるのか、となってしまう。

 制度を考えれば矛盾だらけといえるだろう。

 多くの議会で1年、もしくは2年で議選監査委員は入れ替わるため専門性を高められない。専門的知識を持った議員がなるとは限らないことを考えると、監査の仕事ができるのかとの、そもそもの疑問も残されている。

 このことも考えると、大津市議会の今回の決断は、議会制度自体を再考する大きな論点を投げかけられたことにもなる。とはいえ、大津市議会に続く議会がどれだけ出てくるかは分からない。さてどうなるか。
 

※武蔵野市は慣例で監査委員は一般質問をしないが議会によっては行う
 
 
http://blog.livedoor.jp/go_wild/archives/52519642.html

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