2016年11月8日火曜日

地方自治を地方専治にさせてはならない

<三鷹市議のブログより>


長野県富士見町で、町議会の存在を町長が否定する勢いの、信じられない出来事が続発しています。論より証拠ということで、富士見町議会の議長さんのブログから引用を列挙してみましょう。なお、以下の日付はそのブログのアップの日付です。


9/16

補正予算案が修正可決された。複数のITプロジェクトを議会側が不要と判断し削除する修正であった。



9/16

本会議最終日に修正案が可決されそうな手前の時点で、町長から全員協議会開催の要求。その場で町長が「常任委員会の記事が出て「森のオフィスのスタッフが、我々はどうなってしまうのか(開発試作中の企業)と詰め寄られた」と泣き落としできた。

(※半田注)

議案が通る前に特定企業に先に依頼していたのかとの疑問が湧きます。議長もブログで「この事業やるとまだ決まっていないのにもう動き出しているの?」と疑念を表明。



10/15

町長から議長へ電話。「ここは議長に一肌脱いでもらいたい」と発言。さらに、

「反対している議員を集めて説得してもらいたい」

「町から離れた人目につかない場所で(具体的に店の名前まで言われた)一席設け調整してもらいたい」

「以前の議長も難題の時はそうして調整した」

「そうしないことが議長の役目をしていない」

と発言。

議長が突っぱねたところ、「どこの議長も行っている。やらないのは富士見の議長だけだ」と町長が発言。

(※半田注)

いわば議会内談合を議長主導でやれと言っているに等しく、町長は議長を部下だと思っているのかとの疑問が湧きます。どこの議長もやっているとは、他の議長さんへの侮辱ですね。議長もブログで「この言葉は他の市町村の議長に対する侮辱でとんでもない発言」と疑念を表明。



10/19

10/14に議長へ町長から電話。

「10月末から町内5か所で開かれる住民懇談会に、議員にも多数出席してもらいたい」

「住民から意見、質問が出たら議員に振るから答えてもらいたい」との内容。

※町長は議員を部下だと思っているのでしょうか。なお、出席については、後日、議会側から拒否。この住民懇談会は10/30を最後に複数回開催。



10/31

全員協議会開催。

・冒頭町長から、「町をよくするために同じ方向を向いていない。」との発言あり。これを受けて議長は「議会は町の利益のためと判断して前回否決した」と釘を刺した。

・10/30の懇談会で町長が「議長は行政に批判をするような文面を全国にばらまいている」と発言したことが明らかにされる。議長は「私は町長の不当な私(議長)への介入、住民懇談会での間違った説明を指摘しただけで、町政への批判は一切行っていない」と発言。

・10/30の懇談会で町長が「富士見町にとって何の利益もないブログ、ツイッター(町民の宮下伸悟氏のつぶやき)はやめてもらいたい」と発言したことが明らかにされる。議長はこの件につき「町長の発言は、言論の自由を保障している憲法に違反するもので、住民懇談会という場所で言うことは大変な問題である」と発言。

・11/4に臨時議会招集決定。

以上が事実経過です。富士見町議会の議長さんは加々見さんという方です。ぜひ彼のブログをご覧ください。9/16以降が重要です。彼の励みになるでしょうから、ご覧になられた方は、ぜひ下部の「拍手」ボタンをポチッとしてあげてくださいね。

富士見町議会議長のブログ

さらに、上記引用で名前が出ている宮下さんのツイッターを見ますと、さらにびっくりすることが書かれています。特に絞りに絞って、2つのツイートを紹介しておきましょう。

信濃毎日新聞の記事について

長野日報の記事について

この2つのツイートからわかることは、上記の議長のブログの正当性です。独りよがりのエントリーではなく、新聞も報じるくらいですから、議長はきちんと事実を述べられているんだなと好感を持ちました。一度お会いしてみたいですね〜。

さて、この流れを見て、幾つかの論点が見えてきますね。以下、幾つか挙げてみましょうか。

1)議案が通る前に、町長が特定企業に発注していたと思われる節がある。しかも、そのことを町長自身がわざわざ述べている。

2)町長が議長に議会内の取りまとめを依頼しているが、そもそも議長とは議会運営に中立でなければならず、町長がわざわざ中立である必要はないと議長に圧力をかけていると思われても仕方がない事態が発生している。

3)町長が住民懇談会に議員も出席させるようにと発言していることから、議員を部下だと思っている節がある。

4)議長のみならず、一私人の発言に対しやめるように、公開の場で町長が発言していることから、自分の意に沿わない人は公人であろうが私人であろうが、表現の自由を認めない立場だと取られても仕方がない。

以上を踏まえて、改めて二元代表制とは何か?について考えてみましょう。以下、地方議会をただ議会と表現することにします。

そもそも議会は、当該自治体の「意思決定機関」です。みなさんは選挙の際に、例えば市なら市長と市議会議員の双方につき投票しますよね。あれは意味があるんです。

わざわざ別に投票するんだから、長に期待される役割と、議員に期待される役割は、当然別なんです。

長は予算編成の権利を持ち、様々な議案を議会に提案します。

議会はそれを受けて、良し悪しを決めます。

「良し悪しを決める」…そうまさに先に書いた「意思決定機関」なんですよね。長が予算編成し、勝手に予算を執行したらどうなりますか?

嫌な予感がしますよね。その通りです。だからこそ、議会が存在するのです。教科書的には「相互の牽制と均衡」と言われていますね。牽制と均衡とは言い得て妙です。

ここまで読まれたみなさんは、改めてこのエントリーの出だしをご覧ください。

いかがですか?

議長をはじめとして、見事に牽制を果たしているのです。お見事です。これぞまさに「ザ・議会!」ですね。

ところが町長側はどうでしょうか?

明らかに二元代表制に反する行動ですね。いわばいうことを聞け!を堂々とやっているのですから、そうですねぇ、あえて言えば「一元代表制」を地で行く方と思えてしまいますね。

よく地方自治の世界では、「行政と議会は車の両輪でなければならない」という方がいらっしゃいます。

果たしてそうでしょうか?

両輪なら、片側の軸が右を向いたら、もう片方も右を向くわけですよ。

もうお分かりですよね?

「牽制と均衡」どころではなくなってくるのです。

地方自治の世界で、車の両輪の例えは、私は間違っていると思います。

あえて言えば・・

信号ですかね。

走っている車を一旦停車させる信号です。「牽制」ですね。

車の両輪を例に出して、一元代表制?を地で行く方に、議会は議会としてきちんと仕事をしているわけです。つまり、富士見町議会はまさに理想の地方議会なんですよ。

この事件はどういう結末を迎えるんですかね?

私にはわかりません。決めるのは、富士見町議会ですから。

ただ、私はきちんと仕事をしている地方議会の例として、みなさんに紹介したかったんですよ。

一元代表制?と取られても仕方がない現状でしょうから、どうでしょう?「地方自治」に対して、「地方専治」と造語で言ってみることにしましょうか。

よく報道では、議会は議会の仕事をしてないとのニュースが流れますが、このような素晴らしい議会もあるんですよね。地方専治を防ぐべく努力している議会を、もう少し報道してもらってもいいのではないでしょうか?政務活動費の問題以上に大切なことだと思いますよ。

私は三鷹市議会議員ですが、この富士見町で発生している地方専治が全国に広まったら困ると考え、今後も注視していきたいと思います。あの阿久根市を超える案件とすら言えると思いますね。もう少しこのことが広まって、マスコミを始めとしてきちんとした監視をする必要がありますね。今後どうなるか?引き続き注目です。

最後になります。みなさんに質問です。

みなさんは、地方自治と地方専治のどちらが理想とお考えですか?

私の答えはいうまでもありません。

なお、ここまでの流れは、ツイッターでも大きな話題になりました。

以下、togetterを紹介します。

【長野県富士見町】二元代表制の意味を理解しようとしない異常事態


http://ameblo.jp/handanobuaki/entry-12215695218.html

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