2017年6月14日水曜日

チェック機能を果たしていない地方議会、「否決」「修正」ともにほぼゼロ

<THE PAGEより>


 早稲田大学マニフェスト研究所は2010年度から毎年、全国の地方議会でどのくらい議会改革が進んだかアンケート調査を実施しています。「議会改革度調査2015」では、「情報共有」「住民参加」「議会機能強化」の3つの観点に分けて、回答結果を数値化しました。その中から「議会機能強化」を取り上げます。

「地方議会改革」は進んだか

二元代表制の機能をフルに活かすには「バックヤードが大切」

チェック機能を果たしていない地方議会、「否決」「修正」ともにほぼゼロ
 「議会機能強化」の観点では、議会本来の権限・能力を発揮するための機能強化状況がどうなっているかということに主眼を置いています。では、議会本来の権限・能力とは何を指すのでしょう。
 同研究所の中村健事務局長は「地方議会は二元代表制。例えば首長が独裁者のような人だったら、ちゃんと議会がチェック機能を働かせることができる、これが地方自治のいいところ」と話します。「議会の最大の権限は議決。そのために議会は、首長提案に対し、間違っていないか調査分析する、または対案を検討・作成する」。こうした二元代表制の機能をフルに活かすためには「バックヤードが大切」とみています。

執行部案の否決「0件」9割弱の議会

[グラフ1]全国地方議会の執行部提出議案の否決件数と修正案の提出件数=早稲田大学マニフェスト研究所「議会改革度2015」より作成
 地方議会は、知事や市長といった首長が組んだ予算案や、知事部局・市長部局などの執行部が提出した各議案が適正であるか審議し、採決します。調査ではそうした議会に提出された議案に対する否決件数や、議会内の委員会がまとめた修正案提出件数について質問しました。すると、これら提出議案を否決した件数が「0件」と答えた議会は87.8%と大多数で、否決が「1件」も9.1%しかありませんでした。議会の委員会が修正案提出、あるいは議員が修正案を提出した数も「0件」がほぼ9割で、ほとんどの地方議会が執行部案をそのまま通している状況がわかりました(グラフ1)。
 また、「議員間の自由討議」を設け、実績がある議会は2割にとどまり、まだ導入していないところは6割ありました。議員の質疑に対する首長や執行部の反問権は、「趣旨確認の反問権」を導入しているところは約半数(実績なしも含む)でしたが、「逆質問や反論権を含む反問権」は7割以上で導入されていませんでした。
 中村事務局長は、議会がチェック機能を果たせるよう、独自に首長や執行部と違う調査分析ルートを持つためには「インターネットでも、いろんな外部知見者とのつながりでも、国会図書館との連携とかでもいい。バックヤードが首長とは違う独自の仕組みを持つことが重要」と強調します。

議会改革に関する実行計画「作成していない」95%

[グラフ2]地方議会の議会改革についての実行計画作成状況=早稲田大学マニフェスト研究所「議会改革度調査2015」より作成
 調査では、議会改革に関する実行計画の作成についても尋ねました。「議会基本条例を基に作成」と答えたのが25議会(1.8%)、「議会基本条例とは別に作成」44議会(3.1%)しかなく、95.1%の議会は作成していない、と答えていました(グラフ2)。
 また、議会のICT(情報通信技術)化を質問しました。議場にノートパソコンやタブレットを持ち込んで、会議中にインターネット閲覧や資料検索など利用できるかという問いには、「本会議場での利用が可能」は16.0%(このうち3.0%は実績なし)、「利用できない」が約半数の45.8%で、4割弱は取り決めがありませんでした。「委員会での利用」については4分の1弱が「可能」と答えていますが、「利用不可」(36.9%)のほうが多く、こちらも取り決めなしが約4割でした。
 このほか、全議員にタブレットやノートパソコンを貸与している議会は約5%にとどまり、「実施予定(タブレット2.5%、ノートパソコン3.5%)」、「検討中(タブレット20.2%、ノートパソコン3.5%)」の答えもありましたが、ほとんどの議会が「検討していない」(タブレット72.0%、ノートパソコン91.0%)状況だとがわかりました。議案資料などの電子化は「実施(7.1%)」と「実施予定(2.6%)」を合わせても1割に届かず、7割以上の議会では検討していません。
 同様にテレビ電話を使った遠隔会議を実施しているのは全国2議会(0.1%)のみで、97.9%は「未検討」。賛否をシステムで集計・表示する電子採決を実施しているところは63議会(4.5%)で、こちらも88.2%のところが検討していませんでした。

議会自身が常に最適な組織・ルールに改められるか

 中村事務局長は「地方議会が、チェック機能や議決機能を最大限にするためには、いまの議会活動の仕組みやルール、組織を、議会自身が最適なものに常に改められているかという点が重要」といいます。その視点からも、議会のICT化は必須になってきていますが、「AI(人工知能)の時代だが、導入するのであれば、今の組織ではおそらく時代遅れ」とも指摘します。しかし「例えば、東京都の島しょ部の議員も、テレワークの仕組みがあれば、委員会のために何時間もかけて都議会に出てこなくてもいい。時間の無駄や効率悪い、生産性が上がらないところを、議会自身が改めていけるか」。
 議会が自らの力で、機能強化に努めることができるのか……。調査結果からは、地方議会が住民のために役立つことを意識した組織づくりを目指しているのか、そしてその運用ルールは、人口減少、少子高齢社会など地域ニーズに応じ、ICT化への対応といった時代の変化に即したものになっているのか、真摯に見つめなおす必要性に迫られています。
https://thepage.jp/detail/20170531-00000008-wordleaf?page=1

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