2017年6月26日月曜日

東京都議選「決めようがない」 議員を選ぶ“成績表”公表のない都議会

<@niftyニュースより>


東京都議選「決めようがない」 議員を選ぶ“成績表”公表のない都議会
[イメージ]もし子どもの成績表がなかったら……。私たちは客観的な評価基準がないまま、納得した上の選択は可能なのでしょうか(イラスト:ペイレスイメージズ/アフロ)
 
ある都民の家庭で……もし息子個人の成績表がなかったら?
 都民夫(みやこ・たみお)さんは妻と高校生の息子・都議一(みやこ・ぎいち)さんの3人で東京都内に暮らしています。世間では「働き方改革」も言われていますが、一人息子の学費捻出のため、残業もなんのその、忙しく働いてきました。ふと気がつけば、家庭をあまり顧みる時間がなかった民夫さん。しかし、議一さんの通う都議会高校で、もうすぐ編入生を含めた入れ替え試験があると知り、民夫さんは議一さんの成績がどのようになっているのか、心配になりました。

「議一、今までちゃんと勉強してきたんだろうな」。
「うるさいな。やっているよ」。

「お父さんは議一には、いい大学にいってほしいんだ。そのためなら、高い授業料だってなんとかするよ。だから、一度成績表は見せなさい」。

 しかし議一さんがしぶしぶ父親に見せたのは、クラス全体の総合得点だけ。個人成績表は「ないよ」の一点張りです。

「えっ、これじゃあ、今まで何してきたのか、まったくわからないじゃないか。今後のこと、決めようがないぞ」。……(つづく)。
都議一人ひとりの賛否結果は公開なし
 23日、4年に一度の都議選が告示されました。都議会は、選挙で選ばれた住民代表である議員127人で構成されます。都知事が正しく都政運営しているか、予算をはじめ、さまざまな議案を適正にチェックし、決議することが議会の最大の役目です。また、議員自身が住民のためになる条例を考えることも求められています。

 地方議会で日本一高額だった都議の議員報酬、政務活動費(どちらも2017年度は減額)私たちの税金から支払われてきました。では、4年間、都民のために各議員がどのような議論をし、どのような判断をしてきたのか……。

 例えば、東京都議会のホームページを開いてみます。すると「都議会だより」や「会議の結果と記録」のところで、答弁や議決の結果、各会派の賛否を報告しています。しかし、都議1人ひとりが議案に対し、賛成・反対どのように行動したのか、また肝心の理由について明らかにしていません。また議員提出議案も、提出者の氏名や提出理由、だれが賛成反対したか、一目でわかるようになっていません。

 つまり、民夫さんのようにクラス全体(=都議会)の総合得点を教えられてはいても、一票を投じるための重要な情報である議員それぞれの“成績表”は公開されていないのです。
小遣いの使い道を見せたがらない息子がいたら、あなたはどう思いますか?
 さて、困った民夫さん。次に気になったのは、議一さんに渡してきた小遣いの使い道でした。

「議一、海外語学研修だの、勉強の合宿だって、何度も泊まりに出かけたけど、何を勉強してきたんだい。何か成果を見せてくれないか」。
「わかったよ、見せればいいんでしょ」。

 そこで議一さんが、民夫さんに見せられたのは出かけた先々で仲間と撮った写真ばかり。何を学び、それが議一さんにどのくらい役に立ったのかは、これではさっぱりわかりません。

 民夫さんはため息交じりで尋ねました。
「しょっちゅう問題集やら、参考書やら買うからって、小遣い渡したよね。買ったものぐらい見せなさい」。
「えっ、面倒だよ」。

「なんで見せないんだ。じゃあレシートくれないか」。
「レシートは学校に置いてきたよ。見たけりゃ都議会高校に来いよ。なんだよ、信頼できないのかよ」。

 議一さんはふてくされた様子で、部屋に閉じこもり、鍵をかけてしまいました……(つづく)。
不備だらけの政務活動費公開
 議員の調査研究のために支払われている政務活動費はそれぞれ自治体の条例によって使途や金額が決められています。都議会では、前年度まで地方議会で最も高い60万円の政務活動費が先払いされ、その収支報告書と領収書の写しを公開してきました。

 しかし、議員がそれぞれ、どのような調査をし、どのような施策や住民福祉のために、政務活動費を使ったのか知るために欠かせない活動報告書、視察報告書は作成、公開の義務がなく、ほかの多くの自治体では議会に提出することになっている会計帳簿(出納帳)も必要ありません。公開したのが、個人情報保護を理由に氏名や金額を伏せた、不明瞭な“黒塗り”領収書では、例えばそれが生計を同じにしている親族に支払われていても、有権者は確認できないのです。

 さらに、収支報告書と領収書の写しを閲覧するには平日に都議会議事堂まで行く必要があります。すでに一部の会派や議員は、ホームページやブログを用い、その使途を明らかにしてきましたが、都議会としては2017年度からようやくインターネット公開に踏み切ることになりました。

 つまり現時点では、全都議が過去4年間の任期中にどのように政務活動費を使ったか、有権者がいつでも簡単に全容を把握できる仕組みにはなっていません。お金を一方的に支払っただけで、領収書すらすぐに確認できない民夫さんの状況と、まるで同じなのです。
知事がめまぐるしく交代 議会にも向けられた都民の厳しい目
 選挙が近づいた都議会。2013~2017年の任期4年間には、猪瀬氏、舛添氏、そして小池氏と知事がめまぐるしく入れ替わる異例の事態が続きました。小池知事就任後は、知事と都議会自民党との対立に端を発し、主権者である都民が蚊帳の外のまま、会派の離脱や新会派の結成が繰り返されました。

 豊洲市場移転問題では、その決定過程が不透明であることが表面化し、百条委員会がもたれましたが、都議会に対しても、首長をチェックするという本来の役割を果たしてきたのか、厳しい目が向けられています。

 しかし、選挙を目前にして、都民が納得して一票を投じることができる情報、すなわち都議同士の実績や考えを比較し、評価するための“成績表”をみることができる、ガラス張りの都議会になっていないのです。

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 議会改革が遅れている都議会。改革が進まないことで、4年間の活動の何が明らかになっていないのか、そして有権者にとってはどんな問題があるのか ── 。都さん親子のやりとりを例にしながらシリーズで考えていきます。

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