2017年6月28日水曜日

高知で「村総会」検討 地方自治を考える契機にしたい

<愛媛新聞より>

過疎化が著しい高知県大川村が、地方自治に一石を投じた。議員のなり手不足を背景に、定数6の村議会に代わり、村民が予算などの議案を直接審議する「村総会」設置の検討を本格化させている。愛媛県でも、議会のあり方や住民の地方自治参加を考えるきっかけにしたい。
 首長と議会が抑制、均衡し合う二元代表制の地方自治で、議会が機能しない状況はあってはならない。和田知士村長は「議会の維持が大前提」としつつ、次の2019年村議選で候補者がそろわないことを懸念する。議会維持と並行した総会設置の検討は、現実的な選択肢だ。
 新居浜市などと接する大川村は人口約400人。公選法は欠員が6分の1を超えた場合、欠員分を補う再選挙実施を規定しており、大川村は欠員が2人以上なら再選挙となる。
 議員のなり手確保は難しい。村民の45%が65歳以上。高知県で最低の報酬月額16万円を、全国の町村議平均21万円にしても議員職だけでは生活が厳しい。議会の夜間・休日開催、職場の休職制度など、兼業議員が出席しやすい方法も検討事項だ。
 一方で、総会の運営も解決すべき課題が多い。地方自治法は「町村の議会に関する規定を準用」とするのみで、詳細の決まりはない。総会成立は有権者約350人の半数の出席が必要。村民は審議のため、専門的な知識を習得しなければならない。
 専門家には「住民に政治参加の機運が高まる」との期待がある。しかし、住民が審議を担えないと、首長による独走状態になりかねない。
 実際の運営は、村任せではなく国や県の支援が必要だ。総務省は来月、有識者検討会を設置する。各地の実態を踏まえ、総会の運営方法、効果的な議員のなり手確保策などを打ち出す責務がある。本業と議員とを兼業しやすくする方策、雇用創出策などを大川村と共同で協議する高知県の役割も大きい。
 町村議のなり手不足は全国共通で、15年統一地方では24%が無投票だった。愛媛の9町議会では、それぞれの直近選挙で無投票は15年の松前町だけだったが、特に過疎町村では今後、候補者不足が深刻度を増すのは間違いない。
 04年に合併で上島町になった旧魚島村は当時、人口約280人。定数6だった村議選は合併前、無投票が続いたが、最後の村長の佐伯真登さんは「対立を避けるためで、なり手がいなかったわけではない」とし、大川村について「現実的に総会運営は困難だろう。候補が少ないのは報酬の問題ではない。郷土愛の強い人に立候補を働き掛けることが大切だ」と述べる。
 地方議会に対し、首長へのチェック機能を果たしていないとの批判は強く、近年は政務活動費不正問題もあって、厳しい視線が向けられている。大川村の問題提起をきっかけに、議会改革や機能強化につなげていかなければならない。

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