2016年5月11日水曜日

<18歳選挙権 未来を拓く>主権者の意識(2)

<静岡新聞より>

■岐阜県可児市 市議会全体で生徒支援 市議会が主権者教育に取り組み、全国から注目を集めるまちがある。岐阜県可児市。地元の県立可児高で3月25日に行われた模擬選挙では、市議の存在感が際立った。
 「突拍子のない意見でも構わない。君はどんな可児市なら住みたい?」。市議に促されて熱弁を振るう高校生たち。やがて、あちこちで活発な議論が交わされた。「主権者教育に関わる理由は開かれた議会を作るため。それにはまず、議会が若者はもちろん、全市民の声に本気で耳を傾ける姿勢を示す必要があると考えた」。市議会議会改革特別委員会の川上文浩委員長(55)は真意を明かす。
 もう一つの理由は、まちの現状への危機感にあるという。同県南部の可児市は名古屋市まで電車で約1時間。多くの若者は高校卒業と同時に進学や就職でまちを離れ、近接する都会へと流れる。東京、名古屋の大都市圏に挟まれた本県と同じような悩みを抱える同市。川上委員長は主権者教育がこの現状からまちを救うかもしれないと期待する。「主権者教育とは、まちづくりを主体的に考え、行動する人材を育てること。自分の手でまちをつくる楽しさを知れば、地域への愛着も深まり、戻ってくる若者も増えるはず」

同市議会は今回の模擬選挙で、生徒が作ったマニフェスト(公約集)に助言したり、投票箱などを市選挙管理委員会から借りる交渉を仲介したりした。昨年から、若者と一緒にまちづくりを考える地域課題懇談会や高校生議会なども開いている。中教審学校地域協働部会委員を務めた可児高の浦崎太郎教諭(51)は、市議の本気度に目を見張る。「市議会は生徒に主権者意識を『教える』のではなく、あくまで『引き出す』というスタンスを貫いている。学校主導ではこうは行かない」
 静岡県内では政治的中立の観点から市議や県議らが学校現場の主権者教育への参加を断られるケースもみられるが、浦崎教諭は「可児市議会は実態が全然違う」と説明する。同市議会は政治的中立を守るため、特定政党や会派、市議単独の行動は厳禁と取り決めているという。川上委員長も「単独行動は政治活動と受け取られかねない。私たちが受け入れられるのは、政治的意見の相違を超えた市議会全体の取り組みだからこそ。議員相互で中立性を侵害していないかチェックし合える態勢をきちんと確保している」と強調する。


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