2018年2月16日金曜日

住民の声届く議会に 長野県の町村、改革に試行錯誤

<日経新聞より>

長野県内の町村で議会改革の取り組みが活発になっている。2017年には喬木村や小谷村が夜間・休日議会を取り入れた。住民を巻き込んで改革を続けてきた飯綱町は、先進的な事例として全国から注目を集めている。背景には、議員のなり手不足や住民の関心の低下が小規模自治体にとって大きな課題となっていることがある。

控室を改装した部屋は喬木村議や議会事務局員の意見交換の場としても使われる
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控室を改装した部屋は喬木村議や議会事務局員の意見交換の場としても使われる

 喬木村議会の議場近くにホワイトボードがある小部屋がある。17年11月に議員控室を改装して設けた。議員が議案の事前勉強や意見交換をするために使う場所だ。情報共有の円滑化を狙って導入したタブレット端末を手に、議員らが話し込む光景がみられる。

 喬木村では17年12月議会から夜間・休日議会を取り入れた。「大事なのは議会活動の活発化」。下岡幸文議長が強調するのが議論の質を高めることの重要性だ。議員のなり手確保を狙って夜間・休日議会の開催を決めたが、それだけでは議会の充実にはつながらない。議員の入念な事前準備とあいまってこそ、有意義な議論ができるとみる。

 同村の議会選は直近5回のうち3回が無投票選になった。下岡議長は住民が期待する議会と実際の議会がかけ離れていると感じたという。議員になるのは農家や自営業の高齢者が多く、出身地区も偏っている。若者や会社員なども参加し、意見を述べ合う環境を作ることが議会改革の狙いだ。

 夜間・休日議会の総括では兼業のしやすさを評価する意見が出た。一方「議員の質が今より上がって議論が活性化した場合、時間内に終わることができなくなるのではないか」という指摘もあった。村議会は今後、議会活動に協力的な雇用主を支援する仕組みなどを研究するという。

 議会の質向上となり手不足という課題に向き合い、成果を出しつつあるのが飯綱町議会だ。

 テーマごとに議員と住民有志で会議を作り、半年から1年かけて議論して町長に政策提言をする「政策サポーター制度」を10年に導入した。議会活動への町民参加が広がり、議会への関心を高めることに成功している。

 これまでに40人余りが政策サポーターとなり、そのうち5人がサポーター経験後に町議になった。17年まで8年間議長として改革を進めてきた寺島渉前議長は「議員のなり手不足問題の一つの解決策だ」と胸を張る。

 改革は約10年前に同町の第三セクターが破綻した際、議会の監視機能が働いていないと批判を浴びたのが契機になった。寺島前議長は議会が町政の「追認機関」と化していることが町民の議会への関心低下を招いていると分析。議論の活発化と開かれた議会を目指して改革を進めてきた。

 議員がいない集落や女性、若者を中心にサポーターに就いてもらい、多様な意見を取り入れようしている。

 住民視点が入ることで成果もあった。人口減対策を議論するサポーター会議の中である住民が、隣接する長野市では時間外保育が無料であるのに対して飯綱町では有料なことを指摘。町は一部無料化を決めた。飲食店を営む女性(50)は一連の改革について「住民の声が通りやすくなったように思う」と評価する。

 ●改革の継続性 重要

 長野県の町村数は北海道に次いで2番目に多い58。議員のなり手不足など小規模自治体特有の課題をどう克服するかは県全体としても大きなテーマだ。阿南町は将来の議員のなり手を増やそうと、町内の学校の生徒が議員と話す機会を設けたり、議会の傍聴に招いたりしている。人口減が進む中、議会を継続させるための模索が各町村で続く。

 地方自治に詳しく、長野県立大学公共経営コース長に就任予定の田村秀新潟大教授は飯綱町の政策サポーター制度について「こうした形で様々な議論を吸収する手法は、他の議会も取り入れた方がいい」と評価する。

 一方で喬木村の取り組みについては「過去に夜間・休日議会に取り組んだ自治体は根付かなかったケースが多い。いかに継続するかが大切だ」と指摘する。改革を一過性で終わらせないことが肝心だ。

 富山市議会で政務活動費を不正請求した議員が大量辞職するなど、地方議員への住民の視線は厳しくなっている。議員の数の確保に加え、その質も向上させる地道な改革があってこそ、2元代表制の一翼としての議会の存在感が高まる。(北川開)


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